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インボイス制度導入により売手負担の振込手数料処理が煩雑になるらしい

振込手数料は契約等で売手負担とされていることもありますが、実務上それよりもよくあるのは、本来手数料は買手負担のはずであるにもかかわらず、振込手数料が差し引かれて入金されてくるというケースではないかと思います。

法律的には、民法で商品の販売代金等を決済する際の振込手数料は、持参債務の原則(民法484条、485条)により、契約等で別段の定めがない限り、買手が負担することとされています。

とはいえ、振込金額がそれなりに大きい場合には、数百円の手数料を振込金額不足として、再請求せず、売手側で支払手数料等で処理をしてしまっているというケースが多いのではないか思われます。

そして、この支払手数料等の消費税については、課税仕入れに計上していることが多いと思われます。

さて、このような振込手数料について、インボイス制度導入後はどうなるのかという点が税務通信3678号の税務の動向で取り上げられていました。

まず、現行の区分記載請求書等保存方式では、税込3万円未満の取引については、請求書等の保存がなくても帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められており、振込定数料は通常数百円ですので、振込手数料に対する請求書等がなくても仕入税額控除ができるという点で問題は生じないとされています。

しかしながら、「インボイス制度においては3万円未満の取引について、現行のように「帳簿のみ保存」による仕入税額控除( 消令49 ①一)は原則として認められない」うえ、「請求書等の交付を受けなかったことにやむを得ない理由がある場合の「帳簿のみ保存」の特例(同49①二)も廃止されるため、振込サービスに係る適格請求書等の保存が必要」となります。

税務通信の記事では、まず「買手は売手が負担すべき振込手数料を立替えたにすぎず、代金決済と同時に立替金が精算されたと整理」した場合、「売手は、買手が金融機関から受領した振込サービスに係る適格請求書と立替金精算書(金融機関の名称、登録番号、振込手数料の金額等が記載されたもの)の交付を受け、これを保存していれば仕入税額控除を受けることができる」とされています。

本来買手負担の手数料が差し引かれて振り込まれてきたというケースを想定した場合、みなしの前提が苦しいという点は置いておくとしても、本来負担すべき手数料を差し引いて振り込んでくる買手から仕入税額控除を受けるために必要な資料をもらうということは現実問題として困難であると考えられます。

そこで、次の手として「売手が振込手数料相当額を値引きしたと整理し、売上に係る対価の返還等」として処理するという方法が紹介されています。

この方法による場合には、「売手から買手に対して「適格返還請求書」を交付すること」となります。つまり、売手側の事務処理で対応することが可能ですが、数百円の手数料のために余計な事務負担やコストが生じることとなりますので、インボイス制度の開始前に対応策を検討しておく必要があるようです。

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