「四半期開示」はどこに落ち着く?
自民党の総裁選をやっている時に”岸田氏は四半期決算撤廃派?”で取り上げましたが、岸田首相は四半期決算の在り方を見直そうという意気込みを持っているようです。
分配政策について、金融所得課税の見直しに一度触れつつ、当面金融所得課税の見直しは当面考えていないという認識を示すに至った経緯もあるので、こちらもなくなったのかとおもいきや、2021年11月8日に公表された「新しい資本主義実現会議」による「緊急提言~未来を切り開く「新しい資本主義」とその起動に向けて~」の中の「(4)労働移動の円滑化と人的資本への投資の強化」で以下の通り述べられていました。
企業の人的投資を促進するため、金融審議会において、企業の人的資本への投資の取組などの非財務情報について有価証券報告書の開示の充実に向けた検討を行うとともに、投資家や企業の意見を踏まえ、市場への影響を見極めた上で、適時開示を促進しつつ四半期開示を見直すことを検討する。
四半期開示の見直しというので、四半期は各社が短信を公表する位にする方向で議論されるのかと思っていましたが、上記の目的は、「企業が、長期的な視点に立って、株主だけではなく、従業員も取引先も恩恵を受けられるように経営を行うこと」を促すことにあるようですので、この文脈で四半期開示を見直すというのはどういう方向になるのだろうかというのが気になります。
会計的に長期といえば1年超だったりしますが、長期的な視点での経営という場合には、少なくとも5年よりも長い期間が連想されます。株主を過度に重視して短期的な利益のために従業員や取引先を虐げることがないように長期的視点に立ちましょうというのは理屈としてはよくわかりますが、そういった観点で企業に開示をもとめるということになるとすれば、当初の想像に反し、開示はむしろ面倒になっていくという気がしてなりません。
企業の人的投資を促進するのであれば、結局のところ、開示云々ではなく、それを促すインセンティブをどのように設計するのかに注力したほうがよいと個人的には思います。