いったいいくらもらえるの?-遺族年金(その1)
生命保険等に加入する際に一番迷うのは保険金額(保障額)をいくらにするかという点ではないかと思います。
保険金額を決める際に、知っておかなければならない事項に遺族年金の存在がありますが、内容についてはほとんど知らないという方が多いのではないかと思います。関連する業務に携わっている方であれば、「そんなことはない!」と感じるかもしれませんが、今自分が死んだとして、誰がどのような年金をいくら位もらえるかを理解している人はかなりの少数派だと思います。
学生時代に年金の仕組みを学ぶ機会は多くないですし、社会人になっても入社時に社会保険の仕組みを教えてもらえるわけでもないと思います。保険料は給料から天引きされているけど、老後に年金をもらうためのもの位にしか理解していない方が多いように感じます。
制度が分かりにくいのは、人によってもらえる遺族年金の種類や数が異なる上、もらえるための要件も異なることによると考えられます。
そこで、話を簡単にするため、株式会社に勤めている会社員を前提として以下の話をすすめます(株式会社でなくても法人であれば、厚生年金あるいは共済年金に加入しているはずです)。
厚生年金保険に加入しているかどうか自信がないという方は、給料明細をみて「厚生年金保険料」が控除されているかで確認できます。また、ねんきん定期便の「これまでの「加入履歴」です」という部分で、加入制度に「厚年」として、直近までの期間が加入期間となっていれば加入していることを確認できます。
なお、以下は理解を優先するため表現が厳密な表現でない点にご留意ください。
厚生年金に加入している人が死亡した場合には以下の二つの年金をもらえる可能性があります。
(1)遺族基礎年金
(2)遺族厚生年金
(1)の遺族基礎年金は国民年金からの給付で、(2)の遺族厚生年金は厚生年金からの給付となります。あまり難しく考えず、厚生年金加入者は国民年金からの給付も受けられる可能性があるという程度で理解すればよいと思います。
裏を返せば、厚生年金に加入していない自営業者は、基本的に(2)の遺族厚生年金の給付を受けられないということになります(以前会社員だったという場合には受給できる可能性があります)。
今回は(1)の遺族基礎年金について詳しく見ていくことにします。
<そもそも誰がもらえる可能性があるのか>
まず大前提として、遺族基礎年金をもらえる可能性があるのは、18歳(一定の場合は20歳未満)までの子を養育している妻のみです。
ごく大雑把にいえばポイントは、①高校を卒業するまでの子供を養育しており、②亡くなったのが夫であることです。
つまり、夫婦で妻が亡くなったとしても、夫は遺族基礎年金を受給することはできないということです。あまり多くはないでしょうが、専業主夫で妻が稼ぎ頭であったとしても妻が亡くなった場合に夫に遺族基礎年金が支給されることはありません。
ちなみに18歳というのは、18歳到達年度の末日(3月31日)までを意味するので、高校に通っていれば普通に高校を卒業するまでを意味します。また、支給が20歳までになる一定の場合は、お子さんが一定以上の障がいを有しているようなケースです。
<どれくらいもらえるのか?>
受給できる年金の金額は、養育している子どもの数によって異なります。
平成23年度の金額は以下のようになっています(物価の変動により多少変動しますが、根本的に制度が変更されない限りはこの程度の金額だと考えてよいと思います)
(遺族基礎年金の金額)
788,900円+子の加算(第1子・2子は各227,000円、第3子以降各75,600円)
上記に記載のとおり、遺族基礎年金がもらえるのは一人以上子供を養育していなければならないので、最低限788,900+227,000=1,015,900円となります。
第3子以降の加算は減少しますが、こども手当の代わりに検討されている児童手当は第3子以降増額されるようなので、そうであるならばここも見直すべきではないかと個人的には思います。
<支給要件はどうなっているか>
とりあえず支給要件を書いておくと以下のようになります。
①被保険者または老齢基礎年金の資格期間を満たした者が死亡したこと
②保険料納付済期間(保険料免除期間を含む。)が加入期間の3分の2以上あること(ただし平成28年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡月の含する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。)
大雑把な理解としては、厚生年金に加入していれば国民年金にも加入していると考えてください。
したがって、今回の前提として考えている一般的な会社員であれば、「被保険者」という要件は満たします(といっても結局「夫」はだめです)。なお、基本的に被保険者である全手ですので、後半の「老齢基礎年金の資格期間を満たした者」はここでは無視します。
②の要件は、要はきちんと保険料を納付しているかということです。老後の年金にしても遺族年金にしても、年金を受給できるのは、それまでに保険料を納付していたことの対価によるものです。そういった意味では、民間の保険と同じで、保険料を払っていないのに年金(保険金)だけ受け取ることはできないということになります。
会社員の場合、会社が給料から保険料を天引きして納付しているので、基本的に未納の期間は生じないはずで、現状は特例で直近1年間に保険料の未納期間がなければ支給要件を満たすものとされているので、この要件が問題になることはあまりないと思います。
ただし、20歳を過ぎてフリターをしばらくやっていて、定職についたというような場合や大学卒業直後は注意が必要です。この場合、20歳から国民年金の保険料をきちんと納付、あるいは学生であれば保険料の免除申請をしていれば問題はありませんが、保険料を未納にしていた場合、支給要件を満たさないことになってしまうので結婚して子供がいたとしても奥さんは遺族基礎年金を受給できないことになってしまいます。
繰り返しになりますが、遺族基礎年金がもらえるのは妻だけです。したがって、仮に妻が亡くなった時を考えて保険に加入することを検討されるのであれば、遺族基礎年金はもらえないということを忘れないように注意が必要です。
また、遺族基礎年金の支給は高校生までと覚えておいて下さい。大学への進学を考えるのであれば、その資金は考慮しておく必要があります。
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