借入暗号資産の時価評価による評価損計上は可能?
実務上、影響を受けるケースはあまりないと思いますが、暗号資産の交換業者でない法人が売買に使用する目的で暗号資産を借り入れた場合、負債側の期末時価評価の可否についてT&A master No.932で取り上げられていました。
そもそもこれが問題となるようなのはどのようなケースなのかですが、上記の記事によると、「暗号資産のトレーディングを行う個人が雑所得としての累進課税を嫌い、法人を設立することがあるが、この際に個人で有していた暗号資産自体を消費貸借契約に基づき法人に貸し付ける」ことがあり、この場合、法人再度では借入暗号資産の期末時価評価による評価損計上が可能かというのが問題となるということのようです。
結論としては、”課税当局にもまだ具体的な事例が蓄積されていないことから、現状では本誌の取材に対しても「借入返済時には暗号資産の借入時と返済時の時価の差額を損益として認識するのではないか」とのコメントが示されるにとどまっている”とのことであり、「実務家としては、特に負債側について評価損を計上する際は、慎重な対応が求められることになろう」と述べられています。
なお、会計上の取り扱いについては、一般社団法人日本暗号資産取引業協会による「暗号資産取引業における主要な経理処理例示」に示されている例によれば、「負債側の期末時価評価も想定されていると言える」とのことです。
一方税務上は、短期売買商品等に関する法人税法61条の7において、資産側に関連する規定はあるもの負債側の取り扱いについては言及がなく、有価証券に関する規定と比較しても簡素なものとなっていることから有価証券と同様に考えてよいかも定かではないとされています。
2週間くらい前の日経新聞には「仮想通貨、世界の時価総額1兆ドル消失」なんてものもあり、そもそも1兆ドル消失できるくらいの規模になっていることに改めて気づかされましたが、それだけの規模になっていても税務上の取り扱いは明確ではないというところに問題がありそうです。