有償ストックオプションの会計処理が再論点化?
有償ストックオプションの会計処理について、実務対応報告36号に対するパブリックコメントでは多数の意見が寄せられ反対意見が多く見られたものの、結果的には通常のストックオプションと同様、費用処理が求められることとなっています。
会計上、費用処理が求められることとなり件数は減少したように感じますが、それでも有償ストックオプションを発行するケースは実務対応報告公表後もそれなりに見受けられるという状況が継続しており、「ここ最近は再び有償ストックオプションが一部の上場ベンチャー企業を中心に採用されている」(T&A master No940)とのことです。
最近見られる有償ストックオプションの中には、株価が行使価額の一定割合を下回った場合には権利行使義務が発生するという行使条件が付されているようなものがあり、”会計専門家からは、「この権利行使義務があれば金融商品として取り扱うことが可能であり、費用計上も不要ではないか」との意見も聞かれる”とされています。
主に経営層に対して発行されるということを想定すると、株価がある程度下がった時に、没収されるのではなく権利行使し、時価よりも高い価格で資金を拠出しなければならないという仕組みは、トリガーとなる下落率にもよるものの一般的に株主から受け入れられやすいスキームだと考えられます。
T&A masterの記事では、「もともと発行のフレキシブルさなど有償ストックオプションのメリットは大きいだけに、会計上の取り扱いが明確になれば、採用する企業はより増加する可能性もあろう」と述べられています。確かに、会計上費用計上が不要という整理になれば、同様のスキームを採用する会社が増加する可能性はありますが、会計上の取り扱いはともかく、税務上の取り扱いから、同様のスキームを採用し続ける会社は一定数のこるものと考えられます。
インセンティブという観点で見た場合、会計上の取扱いに影響がなかったとしても、手取りが多くなる手法があれば、株主からみてもそれが効果的な手法であるといえると思いますので、そういった観点からも有償ストックオプションについては一定のニーズがあると考えられます。
上記のとおり、有償ストックオプションの性質によっては、費用処理不要という見解があるとのことですが、個人的には実務対応報告が見直される可能性は低いのではないかという気がします。