テレワークの交通費、所得税の非課税限度額適用の有無は本来の勤務地で判断
平成28年度税制改正により通勤手当の非課税限度額は10万円から15万円に引き上げられた当時は、遠距離から新幹線通勤する人が増えるかもしれないというような話もちらほらありましたが、ここ数年の新型コロナ感染症対応によりリモートワークが増加し、テレワークが原則というような会社もでてきています。
上記のとおり、通勤手当の非課税限度額は15万円となっていますが、新型コロナ前も実際15万円の枠を使って通勤しているという方はあまりいなかったように思います。よって、テレワークの開始によって転居していない場合は、たまに出社することに伴う交通費が、通勤手当であるとしても給与課税されることになる可能性は低いと考えられます。
一方で、勤務地不問というようなケースでは、本社から遠く離れた場所に転居したり、そもそも遠距離の方を採用するということもあり、このような場合には、出社回数等によっては旅費交通費が月に15万円を超える可能性があります。
といいつつも、そもそもテレワーク時の本社等に出社するために要する旅費は、金額によって給与課税対象となる通勤手当なのか、出張旅費なのかという問題があります。勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行した場合に、通常必要であると認められる交通費は、出張旅費として取り扱うものとされ、特段給与課税という問題は生じません。
税務通信3727号の税務の動向の記事によると、「テレワーク時の自宅と本社等間の移動については、従業員等の労務の提供地によって判断が異なる」とのことです。ちなみに、ここでいう「労務の提供地」は「労働契約(労働契約で明確になっていない場合はその他勤務地を定める書類など)における場所で判断する」とされています。
そして、労務の提供地が「自宅」の場合に、旅費規程等に基づき実費精算している場合(通勤手当の支給はないものとする)は、勤務する場所を離れてその職務を遂行するための旅行に該当し、全額が給与課税されないとされています。
一方で、労務の提供地が「本社等」の場合は、勤務する場所を離れてその職務を遂行するための旅行に該当しないので、規程等に基づき実費精算している場合(通勤手当の支給はないものとする)、15万円までは給与課税されないという取り扱いとなるとのことです。
テレワークが原則で、給与課税の心配がないとしても一月当たり15万円を超える費用をかけて出社させることはほとんどないとは思いますが、雑学としておさえておくとよいかもしれません。