連結納税の税効果(その2)
前回は大まかな流れについて書いたので、今回は個別財務諸表における繰延税金資産及び負債の計算についてもう少し詳しく確認します。
連結納税を適用している場合であっても、単体納税の場合と同様に税効果の対象となるものには以下のものがあります。
①財務諸表上の一時差異等に係るもの
②繰越欠損金に係るもの
1.財務諸表上の一時差異等に係るもの
連結納税は法人税のみに適用され、住民税および事業税には適用がありませんが、財務諸表上の一時差異等に係るものについては、個社ベースで別表四あるいは別表五の一に相当する別表四の二付表・別表五の二(一)付表一が作成されるので、単体納税の場合と同様に税効果を計算すると考えておけば問題ないように思います。未払事業税などについては別途金額を把握し税効果を認識するというのも単体納税の場合と同様です。
財務諸表上の一時差異等に係る税効果を計算する際の実効税率は、単体納税の場合と同様以下の算式で計算された実効税率を用いることになります。
2.繰越欠損金に係るもの
やっかいなのは繰越欠損金が存在する場合の税効果です。結論からすれば、繰越欠損金の税効果については、法人税・住民税・事業税をそれぞれ分けで税効果を計算する必要があります。
これは、連結納税が法人税にのみ適用されることにより、法人税・住民税・事業税の繰越欠損金がそれぞれ異なる金額になったり、回収可能性が異なったりすることがあるためです。
P社を連結親法人とし、S1社およびS2社の3社で構成される連結納税グループとして以下のような例で考えてみます。親法人に適用される法人税率は30%、税額控除等は考慮しないものとします。
上記の場合、S2社の所得はマイナスですが、法人税については連結納税が適用され、P社およびS1社の所得と通算されるため法人税法上、繰越欠損金は存在しないことになります。
一方で、住民税および事業税については連結納税の対象とならず、各法人が単体で申告納付することとされており、法人税における連結納税の所得と欠損は地方税法上相殺されません。
なお、課税標準としては、連結所得の個別帰属額(事業税の所得割)、連結法人税の個別帰属額(住民税の法人税割)を使用することとされています。
このため、上記の例でいえばS2社で生じた欠損▲200は、住民税および事業税上は欠損のまま残るということになります。
本題に戻りますが、繰越欠損金に係る繰延税金資産の金額の計算方法については、「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」Q2で示されています。
(1)法人税
(イ) 繰越欠損金
連結欠損金個別帰属額(特定連結欠損金個別帰属額を含む。法人税法第81条の9第3項及び第6項参照)
(ロ) 適用税率
法人税率/(1+事業税率(所得割のみ。以下同じ。))
前述の例では、連結納税グループ全体では所得が生じている前提でしたが、連結納税グループ全体でも欠損が生じている場合に法人税法上も繰越欠損金が生じます。なお、上記の括弧書き内の「特定連結欠損金個別帰属額」というのは、連結納税加入前に各社で生じていた繰越欠損金で、連結納税への持ち込みが認められたものを意味します。
平成22税制改正前までは、連結子法人の繰越欠損金は連結納税加入時に切り捨てられてしまっていましたが、平成22年税制改正によって一定の要件を満たす子法人については、「特定連結欠損金」として連結納税への持ち込みが認められるようになりました。なお、「特定連結欠損金」として区別されているのは、その欠損金を保有している法人の個別所得を上限として控除することができるという制約がついているためです。
次は住民税ですが、少々複雑で長くなるので住民税および事業税は次回にします。
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