パナソニックといえども苦しいようですね-更なる下方修正はあるのか?
日経新聞電子版で“パナソニック「JVC株売却」が物語る懐事情”という記事が目につきました。
この記事の内容を要約すると、以下のような感じです。
・パナソニック電工と三洋電機の事業を吸収し経営統合するのに1兆円近い資金を投入しているうえ、主力のテレビ事業が12年3月期まで4期連続赤字を見込むなど稼ぐ力自体が弱まっている。株価も1981年以来31ぶりとなる安値の水準にまで下落している。
・現預金も2011年9月末で7914億円と半年で2500億円強も減っている。
それを補うため、1954年以来関係があったJVC株を売却(19.28%⇒1.75%)、このほか昨年末にダイキン工業、小糸製作所の株も売却し140億~150億円程度を調達している。ただし、パナソニックは不動産などの資産があまりないので、資金の捻出手段はそれほど多くは残されていない。
(以上記事の要約)
パナソニックに注目している人は別として、一般的にはパナソニックの業績が悪いと思っている人はあまり多くはないようです。“パナソニック”という社名(ブランド)で統一して、よいイメージを与えることに成功しているということなのかもしれませんし、松下幸之助氏のイメージで経営センスのある会社と思われているからなのかもしれません。
2011年10月31日に発表した業績予想の修正によれば、当初1100億円と見込んでいた事業構造改革費用を5140億円に積み増したことなどにより、2012年3月期の連結通期で4200億円の純損失が見込まれています。
第2四半期の決算説明会の質疑応答によると、この特別損失のうち3150億円が有形固定資産の減損によるもので、その他が人員削減・拠点統合によるものとのことです。
3150億円の内訳は、決算説明会資料からすると薄型テレビの構造改革費用が2650億円、半導体の構造改革費用が590億円のようです。
なお、質疑応答で、薄型テレビと半導体以外で大きいのは何かいう質問に対して、これ以外で大きいのは三洋電気関連で900億円、次に大きいのはパナソニック電工と回答されています。
また、三洋電機の「のれん」の減損は不要なのかという質問に対しては、7月にのれんの減損テストを行っているが減損は不要と判断され、会計士にも確認してもらっていると回答されています。
さらに繰延税金資産の取り崩しについては、今回の構造改革費用の大部分は子会社で生じているので単体の繰延税金資産の取り崩しは問題とならないと回答されています。
パナソニックの窮状については、FACTA12月号にも“パナソニック「1兆円赤字」転落も”という記事でとりあげられていました。
この記事における「1兆円赤字」というのは「将来的に見込めると踏んでいた利益を回収できない場合、年度末にかけて数千億円の繰延税金資産の取り崩しを迫られる可能性」があり、「一挙に膿を出し切ることになれば、過去最大の1兆円規模の赤字に転落する可能性がある。」ということのようです。
上記の決算説明会の質疑応答では、パナソニック単体の繰延税金資産の回収可能性には影響しないという旨の回答だったので、子会社で計上されている繰延税金資産についてどうなのかについては触れられていません。
子会社における繰延税金資産の計上額については、単純に連単の差と考えることはできません(特にパナソニックの場合、連結は米国基準、単体は日本基準と会計基準も異なります)が、敢えて平成23年3月末時点の連単を単純に比較してみると、単体で計上されている繰延税金資産は長短合計で約1970億円、連結では約6090億円となっています。
問題となっている三洋電機やパナソニック電工で繰延税金資産が大きく計上されているようだと場合によっては繰延税金資産の取り崩しが必要となる可能性はあります。
また、FACTAの記事では、上記で述べた決算説明会での質疑応答で減損の必要性を否定したのとは裏腹に、今後のパナソニックのリスク要因の一つとして「他企業との提携又はM&A(パナソニック電工及び三洋電機の完全子会社化後の事業再編を含む)で期待通りの成果を上げられない可能性」を挙げている点が指摘されています。
さらに、のれんの減損の他にパナソニックは「追加リストラ」の問題を抱えていると指摘しています。これは2012年1月に、三社を再編して新生パナソニックが発足するが、OEMビジネスに従事する「三洋電気残留組」とよばれる約3千人の社員がいて、同業他社とのOEM契約が切れる2、3年後には行き場がなくなるためリストラが必要になるとしています。
オリンパスの問題が発覚していなかった7月に行われたのれんの減損テストですが、ここまで注目されてくると、やっぱり減損が必要では・・・、なんてことにならなければよいですが・・・
日々成長