会社の清算手続(その2)-総論
前回の続きです。前回は清算株式会社と解散前の普通の会社との相違点について
①能力の制限(会社法476条)
②剰余金の配当、自己株式の取得等の禁止(会社法509条)
③合併等の制限(会社法474条)
について触れたので、今回は清算株式会社の機関から再開します。
④清算株式会社の機関(477条)
清算株式会社の機関としては以下のものがあります。
(1)株主総会
(2)清算人・清算人会
(3)監査役・監査役会
(1)株主総会
株主総会については、解散前と同じ株主構成で存続することになります。
(2)および(3)の説明の前に、清算株式会社における清算人(会)および監査役(会)の設計パターンを確認しておくと、以下のような組み合わせが考えられます。
①清算人のみ
②清算人+監査役
③清算人会のみ
④清算人会+監査役
⑤清算人会+監査役会
※監査役会を設置する会社は、清算人会の設置が強制される(会社法477条3項)ので、清算人+監査役会という機関の組み合わせは存在しません。
(2)清算人・清算人会
会社が解散すると、取締役・会計参与・会計監査人はその地位を喪失し、代わりに少なくとも1名の清算人を置く必要があります(会社法477条1項)。 また、清算株式会社は定款の定めによって清算人会を置くことができます(同条2項)。清算人会を設置する場合は、清算人を3人以上置かなければなりません(会社法478条6項、331条4項)。
解散前に取締役会設置会社であっても、清算人会を設置するかは任意であり、清算人会を設置したい場合には、定款に定めをする必要があります。
<清算人の選任方法>
清算人の選任方法としては以下の三パターンがあります。
①定款の定めによる場合(会社法478条1項2号)
該当するケースは少ないと思いますが、定款に会社が解散した時の清算人の取扱いが定められている場合は、定款の定めに従い清算人が選任されることになります。
②株主総会の選任による場合(会社法478条1項3号)
解散決議を行う株主総会で、清算人を選任した場合には、そこで選任された者が清算人となります。解散前の取締役3名のうちの1名を清算人にしたいというような場合、あるいはまったく外部の弁護士を清算人にしたいというような場合にこの方法が用いられます。
③会社法の定めによる場合(法定清算人)(会社法478条1項3号)
会社が解散した場合、一義的には取締役全員がそのまま清算人に就任するものとされています(会社法478条1項1号)。つまり定款に定めがなく、株主総会で選任されない場合は、自動的に従前の取締役が清算人となることになります。
<代表清算人について>
会社法483条1項において「清算人は、清算株式会社を代表する」とされているので、原則として各清算人が代表清算人になります。
ただし、上記③の法定清算人の場合は、解散前の代表取締役が代表清算人となります(会社法483条4項)。
また、株主総会で清算人を選任する場合は、その決議において代表清算人を定めることができます(会社法483条3項)。
さらに、定款の定めにより複数の清算人が選任された場合には、清算人間の互選で代表清算人を選定することができるとされています(会社法483条3項)。
<清算人の任期>
清算人の任期は法定されておらず、清算結了まで在任するのが一般的ですが、清算結了前に辞任により退任することもできます。また、株主総会の決議によっていつでも解任することができます(会社法479条1項)。
(3)監査役・監査役会
解散時に公開会社または大会社であった会社については、監査役を設置する必要があります(会社法477条4項)。逆にいえば、解散時に閉鎖会社、かつ、大会社でない会社については監査役の設置は任意となります。
なお、解散時に閉鎖会社、かつ、大会社でない会社場合で、従来の定款で監査役を設置する旨の定めのある会社は、解散決議を行うのと同じ株主総会で定款変更決議により定款を変更しておく必要がある点に注意が必要です。
<監査役会>
監査役会を設置する場合は、定款に定めて設置することになります(会社法477条2項)。監査役会を設置する場合は監査役を3名以上おく必要があり、そのうち半数は社外監査役であることが必要とされています(会社法478条5項、335条3項)。
3.解散・清算と事業年度の関係
会社法上、事業年度開始の日から解散の日までが一つの事業年度として取り扱われ、この事業年度は「解散事業年度」と呼ばれます。
例えば、3月31日を決算日とする会社で、9月30日で会社が解散した場合、4月1日~9月30日が解散事業年度となります。
解散事業年度後は、解散の日の翌日(上記の例では10月1日)から1年間ごとに清算中の各事業年度が終了することとされています(上記の例では10月1日~翌年9月30日が清算中の事業年度)。
そして、残余財産が確定した場合は、残余財産確定の日をもって、その事業年度は終了するとされています。
4.定款変更が必要となる事項
会社が解散すると、上記のとおり機関および事業年度に影響を及ぼします。したがって、解散前の定款についてこれらに関連した部分を変更する必要が生じます。
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