モチベーション3.0(Drive)-ダニエルピンク著
原書のタイトルは”Drive”ですが、本書を翻訳した大前研一氏は「モチベーション3.0」というタイトルを付けました。
なかなかうまいタイトルだと感心してしまいます。
モチベーション1.0は生存を目的とする動機付け、
モチベーション2.0は外的な報酬と罰を中心に構築された動機付け、
モチベーション3.0は活動自体からもたらされる内発的動機付け、
を意味します。
モチベーション2.0は20世紀のルーチンワークには有効だったものの、先進国ではルーチンワークは人件費が安い海外で行われるようになったことから減少し、創造性を発揮しなければならないような仕事が増加しているため、モチベーション2.0にバグが生じている。
モチベーション2.0における、アメとムチの致命的な欠陥として著者は以下の7つをあげている。
①内発的動機付けを失わせる。
②かえって成果が上がらなくなる。
③創造性を蝕む
④好ましい言動への意欲を失わせる
⑤ごまかしや近道、倫理に反する行為を助長する
⑥依存性がある
⑦短絡的思考を助長する
①の内発的動機を失わせるという部分では、幼稚園で行われた実験について書かれていました。この実験では、自由時間に絵を描いて過ごす子供を、以下の三つのグループに分けたそうです。
・絵を書く前によくできましたと書かれた賞状を見せて、「絵を描いて、この賞状をもらいたいか」とたずねられて絵を描き、実際に絵を描いたあと賞状をもらったグループ
・「絵を描きたいか」とだけ尋ね、絵を描き終えた後によくできましたと書かれた賞状をもらえたグループ
・単に「絵を描きたいか」とだけ尋ね、「何ももらえない」グループ
この実験では、その2週間後にそれぞれのグループの子供達の絵に対する興味がどうなっているのかが確認されました。その結果、最初から賞がもらえることがわかっていて、実際に賞をもらった子供達は絵に対する興味を大幅に失っていたそうです。
一方で、賞をもらえることを知らなかった子供達と何も知らなかった子供達は以前と変わらない興味を示したというのです。
筆者は、「交換条件付の報酬は、自律性を失わせるからだ」としています。つい交換条件的なことを言ってしまうので、子供に対する接し方に注意しなければと反省しました。
⑥については、「金銭的報酬やきらびやかなトロフィーは、最初は満足感をもたらす快い刺激を与えるが、園感覚はすぐに消え去る。その感覚を保ち続けるために、受け手は、もっと大量に、もっと頻繁に報酬を要求するようになるからだ。」というのが内容をよく説明していると思いますが、この点についても興味深いことが書いてあったので紹介します。
「金銭の勝ち負けが関連するゲームの最中に、脳がどのような反応を示すか観察するために、健康なボランティアに大きなスキャナーの中に入ってもらうという実験だった。勝って現金が手に入る見込みがあると本人が自覚するとき、脳の中の側坐核という部分が活性化した。・・・・(中略)。この反応が興味深いのは、これと同じ基本的な生理プロセス-この脳内物質が、脳の特定の部分に放出されること-が、(アルコールなどの)依存症の場合にも見られるからだ。ほとんどの常用性薬物のメカニズムでも、ドーパミンがいっせいに側坐核へ送られる。気分が高揚し、それが消えると、今度はもっとその薬がほしくなる。つまり、金銭的報酬を約束した場合と、コカインやニコチン、アンフェタミンを摂取した場合では、人間の脳を観察すると、君が悪いほどそっくりな反応を見せるということだ」
人事制度などで、金銭的に動機付けようとする場合がありますが、上記の点をよく考えておく必要があります。
モチベーション3.0には大きく以下の三つの要素があるとしています。
①自律性
②マスタリー(熟達)
③目的
②のマスタリーには、積極的な関与が必要となりますが、「マッキンゼーによれば、労働人口のほんの二、三%しか仕事に自発的な関心を示さない国もある」ということです。
日本は?自分の会社は?と考えてみると面白いのではないかと思います。
同書では最後のほうに必読の15冊が紹介されており、翻訳されているものもあるので今後いくつか読んでみようと思います。
日々成長