ドラギマジックが欧州を救った?
一時はEUが一期に崩壊するかという勢いでしたが、最近では何となくギリシャも何とかなりそうという感じで落ち着きを取り戻したかのように見えます。
これが何でなのかがよくわからなかったのですが、ECB総裁の取った政策が安定化に大きく貢献し、ドラギマジックと呼ばれているという記事を読みました。
ドラギ氏はイタリア人で、MITでMM理論で有名なモジリアーニ教授にに師事し、経済学博士号を取得したそうです。その後、1990年代にイタリアの財務省国庫局長、02年~05年にはゴールドマン・サックス・インターナショナルの副会長を務め、05年にはイタリア中銀総裁になりました。
このドラギ氏が11年11月1日からECBの3代目総裁についているわけですが、それ以降矢継ぎ早に以下のような政策をとりました。
2011年11月3日のECB理事会で政策金利を0.25%下げ、1.25%としました。
さらに12月の理事会でも0.25%下げて、政策金利を1%としました。
金利を下げた上に、12月21日に期間3年物(満期 2015年1月29日)の巨額な資金供給を実施。この長期オペには500余りの欧州銀が応札し、落札額は日本円で53兆円という規模でした。
さらに、12年2月にも長期オペを実施し。前回分とあわせて合計で約110兆円規模の資金を市場に供給しました。
単に資金を多く供給しただけではなく、長期資金を提供するために銀行が供さなければならない担保の基準を大幅に緩め、通常は国債であるところ、資産担保証券についてもシングルAの格付けまで緩和し 、銀行融資についても優良債権は担保として受け入れることにされました。
そもそも欧州の銀行は保有しているABSを処分できずに困っていたので、これは大きな効果があったようです。
その上、長期オペの金利には政策金利の1%が適用されるため、ECBから調達した資金で、例えば利回りが約5%のイタリア国債を購入すると、4%分の利ザヤが稼げることになり銀行に対する収益補填という側面も有しています。
この辺は、ほとんど0%の預金金利で調達した資金で国債を買って収益をあげている邦銀と日本国債の現状からすると、財政状態にかかわらずソブリンリスクというものを安定化させるのには有効な手段と言えるような気がします。
ただ、例えばスペインでは依然若年層の失業率が非常に高い水準にあるというように、本質的にはまだまだ状況が改善されているわけではなさそうなので、今後の展開には注目です。
日々成長。