「比較情報の取扱いに関する研究報告(公開草案)」が公表されました(その2)
前回に引き続き「比較情報の取扱いに関する研究報告」の内容について確認していきます。
1.連結子会社における仮決算から正規の決算への変更、親会社・子会社の決算日の変更は会計方針の変更にあたるか
この点についてはQ6で取り上げられています。
結論からすると、いずれも会計方針の変更には該当しないとされています。
ただし、連結子会社による仮決算から正規の決算への変更については、連結財務諸表規則ガイドライン13-4に従って、所要の事項を注記することが必要となります。
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また、決算日を変更した場合には以下の事項を注記する必要があります。
①親会社が決算日を変更した場合
決算日を変更した旨、変更の理由及び当該変更に伴う連結会計年度の期間(連結財務諸表規則第3条第3項参照)。また、連結決算日の変更を伴う連結会計年度の期間については、当該連結会計年度の月数を記載する必要があります。
具体的には以下の事例のような記載になるようです。
②子会社が決算日を変更した場合
この場合、当該連結子会社の事業年度の月数が、連結会計年度の月数と異なる場合には、その旨及びその内容を連結財務諸表に注記するものとされています(連結財務諸表規則ガイドライン3-3参照)
具体的には以下の事例のような記載になるようです。
2.親子会社の決算日の変更を伴う会計処理及び比較情報の開示
少し前に“IFRSを考慮し8社が決算期を変更”というエントリで記載しましたが、決算日の統一を図るため決算日の変更が行われるケースが出てきています。
この点についてQ7では、以下の前提で、決算日を統一した場合の取扱いがどうなるのかについて述べられています。
・親会社の決算日:3月31日
・子会社の決算日:12月31日
・連結財務諸表の作成にあたって、決算日の差異が3カ月以内であるため決算日の異なる子会社の財務諸表を使用している
まず、決算日の統一を行うタイミングについては、「四半期報告制度や次年度以降の比較情報の有用性等を考慮すると、会計方針の変更の取扱いに準じて、親会社の第1四半期決算から四半期連結決算日の統一を行うことが適当と考えられる」とされている点に留意が必要です。
(1)子会社の決算日(12月末)を親会社の決算日(3月末)に変更する場合
この場合は、子会社では3か月決算か、15か月決算にすることによって親会社の決算日に変更することができます。
子会社の所在国の制度によっては15か月決算を行えないということも考えらますが、3か月決算の場合、決算が1回増えることになりますので、可能であれば15か月決算を選択したほうが事務負担およびコストを抑えることができるのではないかと思います。
15か月決算を前提として親会社の1Qで決算日を統一する場合、下の図の赤い四角で囲った部分の取り扱いをどうするかが問題となります。
この部分の取扱いについては、以下の二つの方法が認められています
①利益剰余金で調整する方法
②損益計算書を通して調整する方法
①利益剰余金で調整する方法
この方法の場合、親会社の1Qでは、同期間の子会社の業績(4月1日~6月30日)を基礎にして四半期連結財務諸表が作成されることになります。
1月1日~3月31日分については、利益剰余金で調整され、年度の連結株主資本等変動計算書では「決算期の変更に伴う子会社剰余金の増加高」等の名称で調整されることになります。一方で、四半期では、連結株主資本等変動計算書の開示が求められていませんが、著しい変動があった場合には、主な変動事由を開示する必要があります。したがって、調整した利益剰余金が重要であれば開示が必要となります。
なお、この方法を採用した場合には以下のような内容を含めて注記することが適当と考えらえるとされています。
・利益剰余金で調整する方法を採用している旨
・子会社の1月~3月までの間に発生した特別な事象について、利害関係人が適正な判断を行うために必要と認められる事項
②損益計算書を通して調整する方法
この場合は、連結財務諸表に子会社の1月1日~6月30日までの6か月分の業績を取り込むことになります。
重要な子会社の場合、業績に与える影響が大きいのでないかと考えらえますが、そのため以下のような事項を注記することが適当と考えられるとされています。
・損益計算書を通して調整する方法を採用している旨
・子会社の1月~3月までの売上高、営業損益、経常損益、税引前当期純損益などの損益に関する情報
・子会社の1月~3月までのその他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益などのその他の包括利益に関する情報
(2)親会社の決算日(3月31日)を子会社の決算日(12月31日)に変更する場合
花王の決算日変更がこれに該当しますが、親会社が9か月決算を行うことになるという点を除けば、基本的には(1)と同様だといえます。
つまり、以下の図で赤い四角で囲った部分の取扱いが問題となりますが、(1)と同様、以下の二つの方法があるとされています。
①利益剰余金で調整する方法
②損益計算書を通して調整する方法
それぞれの方法を採用した場合に、「注記に含めることが適当と考えられる」とされている項目についても(1)と同様です。
あと少し積み残しがありますが、区切りがよいので今回はここまでにします。
日々成長。