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前受収益に適用されるのは正常営業循環基準 or 1年基準

前受収益は、「一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対して支払を受けた対価」を計上するのに用いられる勘定です。

この前受収益について、流動固定分類をどのように考えるべきなのかが話題にあがることがあります。

まず、現実問題として、有価証券報告書で「長期前受収益」という勘定科目を用いている会社を検索すると、相当数会社がヒットします。

例えば、ベスト電器では以下のように、2012年2月期から長期前受収益という科目が登場しています。

もっとも、「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」において為替予約の振当処理を行った場合に、次期以降に配分された額を貸借対照表に計上する科目として「長期前受収益」が明示されているので、その目的で使用されていることもあり得ますが、上記のベスト電器では為替予約は行われていないようですので、為替予約以外に起因する「長期前受収益」であるようです。

一方で、前受収益については、正常営業循環基準が適用されるので1年基準によって流動固定分類を行う必要はなく、全額を流動負債として計上すればよいという考え方があります。

このような考え方の根拠としては、企業会計原則注解16で、「当該企業の主目的たる営業取引により発生した債権及び債務は、流動資産または流動負債に属するものとする」と、正常営業循環基準であることが原則とされている上で、経過勘定項目については前払費用のみ1年基準が適用される書き方になっていることがあります。

該当部分の規定を記載しておくと、

「前払費用については、貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に費用となるものは、流動資産に属するものとし、一年をこえる期間を経て費用となるものは、投資その他の資産に属するものとする。
未収収益は流動資産に属するものとし、未払費用及び前受収益は、流動負債に属するものとする。」

となっています。

よって、経過勘定項目で1年基準を適用するのは、前払費用だけであり、前受収益は1年を超えて収益認識されるものであっても「前受収益」として流動負債に計上すべきだという理屈です。

加えて、財規において列挙されている表示科目にも「長期前払費用」はあるが(財規32条)、その他の経過勘定項目について「長期XXXX」というようなものはないから、前受収益については、流動負債として計上すべきという人もいます。

上記のような考え方はありますが、個人的にはやはり1年基準で流動固定分類をするほうが妥当だと考えています

というのは、財務諸表の利用者の立場で考えると1年基準で前受収益が分類されていた方が有用な情報であると考えられるためです。
つまり、1年基準で前受収益と長期前受収益に分類されている場合、「前受収益」は既に次年度に収益認識されることが確実な部分と理解することができるのでありがたい情報ではないかと思います。仮に、複数年の保守契約が雑多にまじった「前受収益」は、財務諸表の利用者の立場からすると、混乱を招く表示ではないかと思います。

経過勘定項目は、時の経過に従って費用計上されたり収益認識されたりする項目ですから、正常営業循環基準というよりは、期間を基準とする1年基準で判断するほうが自然なのではないかと思います。

仮に、正常営業循環基準で考えるとしても、複数年の保守契約で、かつ代金も先に回収するという取引が標準的な取引であるというような場合以外は、正常営業循環を外れる取引として1年基準を適用すべきと考えられるのではないかと思います。

>したがって、1年の保守契約が標準であるものの、3年とか5年の保守契約がたまにあるというような場合であれば、通常の営業循環を外れる取引として1年基準で流動固定分類をするのが妥当なのではないかと思います。

そもそも、企業会計原則は最終改訂が昭和57年というものですので、当時とは状況が大きく異なっているという可能性もありますので、そのあたりも考慮して判断すべきではないかと思います。

最後に、このような議論を避ける方法として、本来「前受収益」で計上すべきものを「前受金」で処理してしまうということも考えられなくはありませんが、「前受収益」と「前受金」は異なるものですので、表示としては正しくないと考えられます。

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