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平成24年税制改正による退職所得課税の見直し

税務通信3217号の税務の動向で、平成24年税制改正による退職給付課税の見直しが取り上げられていました。

全く把握していませんでしたが、勤続年数5年以下の役員等の退職手当等について2分の1課税が廃止されるというのが改正点で、平成25年1月1日以後に支払うべき退職所得から適用されます。

「役員等」の「等」に誰が含まれるのか(普通の一般従業員が含まれるのか)が気になりますが、所得税法30条4項によると以下の者が含まれるとされています。

①法人税法第2条第15号(定義)に規定する役員

②国会議員及び地方公共団体の議会の議員

③国家公務員及び地方公務員

上記の①~③に該当する者を「特定役員」といいます。

したがって、普通の従業員の退職所得には影響はなく、国会議員等は普通関係ありませんので、会社の役員で勤続年数5年以下の場合に注意が必要と理解しておけばよいようです。

そもそも、なぜこのような改正が行われたのかですが、この点については「2分の1課税を前提に短期間のみ在職が予定される法人役員が、給与分を繰延べて高額な退職金を受け取るなど税負担を回避する事例が指摘されていたことに対応したため」と説明されています。
確かに、一般従業員は給与分を繰り延べて退職金で受け取るというような調整を主体的に行うことはできないと考えられるので、今回の改正の対象とならないというのも理解できます。

では、勤続年数5年以下の役員等の場合に退職所得控除がどのように変わったのかを確認します。

まず、特定役員の在任期間であっても、退職所得から控除できる1年あたりの金額は40万円が原則となります(つまり、普通の従業員と同じ)。

しかしながら、会社役員の場合は、使用人兼務役員であることも多く、この場合は、特定役員退職手当等と一般退職手当等が重複する期間が存在することがあります。
今回の改正で、特定役員退職手当等は最終的に1/2されず、一般退職手当等は最終的に1/2に圧縮されるということから、1年あたり40万円とされている控除額をどのように扱うかで税額も異なります。

結論としては、特定役員退職手当等と一般退職手当等が重複する期間については、特定役員退職手当等から1年あたり20万円を控除することとされています。そして、一般退職所得控除額は、退職所得控除額から特定役員退職所得控除額を控除した残額をいうこととされました(所得税法30条2項)。

具体例で考えてみます。

22歳で会社に入社し、使用人として38年勤務し、その後2年間使用人兼務役員を務めて、さらに2年取締役となって引退したケースを考えます。

この場合、使用人兼務役員の期間も含めて役員の在職期間は4年で5年以下なので特定役員退職手当等について1/2規定は適用されないことになります。そして、まず特定役員退職手当等から考えます(一般退職所得控除額は差額概念と定義されているので)。

すると、退職所得控除は

20万円×2年(使用人兼務期間)+40万円×2年(選任機関)=120万円

と計算されます。

仮に、特定役員退職手当等が1000万円とすると、特定役員退職手当等に係る退職所得は

1000万円-120万円=880万円

となります。

次に、一般退職手当等について考えます。ここでのポイントは、役員専任期間も含めた期間で控除額を計算した上で、特定役員退職手当等で控除済みの額を控除するという点です。
一般退職手当等の控除額・・・800万円+(38年+2年+2年-20年)×70万円-120万円(既に控除済みの額)=2220万円

仮に一般退職手当等が2500万円だとすれば、一般退職手当等にかかる退職所得は

(2500万円―2220万円)×1/2=140万円

となります。

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