改正派遣法の影響は大きい?小さい?
すでに3か月位前のことになりますが、平成24年3月28日に派遣法の改正が成立しました。なお、法の施行は、公布日(4月6日)から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日とされています(現時点でも公表されていないようですが、10月1日施行ですすめられているようです)。
当初、登録型派遣と製造業派遣を原則禁止するというセンセーショナルな内容となっていましたが、さすがにこの部分は国会修正によって削除されることになりました。
そのため、大した改正ではなくなったように思っていましたが、そうでもないようです。ビジネスガイド2012年7月号で改正派遣法について特集が組まれていたので、影響が大きそうな項目を確認することとします。
まず、俗に「派遣法」と呼ばれるので法律の正式名称がなんだったのかわからなくなりますが、従来の正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」でした。
この名称が、改正により「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び労働者の保護等に関する法律」に改められています。
今後しばらくは、「改正派遣法」、さらに時間がたつと従来通り「派遣法」と呼ばれることになるのではないかと思いますので、あまり意識することはないように思います。
今回の改正内容に関しては、厚生労働省のホームページで以下の三つの観点で内容がまとめられています。
(1)事業規制の強化
(2)派遣労働者の無期雇用化や待遇の改善
(3)違法派遣に対する迅速・的確な対処
まず(1)の事業規制の強化ですが、具体的な内容としては以下があげられています。
・日雇派遣(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁止(適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務の場合、雇用機会の確保が特に困難な場合等は例外)
・ グループ企業内派遣の8割規制、離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止
①日雇派遣の禁止
日雇派遣については、全く関係ないという業種も多いのではないかと思いますが、当初は「日々または2か月以内」とされていたものが、最終的には「1カ月以内」に落ち着きました。
日雇派遣を利用してきた業種にとっては、頭の痛い改正のようですが、対応策として「日々紹介」への切り替えが進んでいるそうです。
なんだか脱法行為のようなイメージをもちますが、「日々紹介」というのは昔からあって、日雇い労働者を求人企業に「紹介」するというもので、古くはハローワークで建設業等を対象に行われていましたが、最近では民間企業でマネキンや配膳人等の紹介が行われています。
「日々紹介」と「日雇派遣」の一番の違いは、日雇い労働者の雇用者が誰かという点です。「日々紹介」の場合は、紹介なので求人企業が自分で労働者を雇用することになるのに対して、「日雇派遣」では派遣元が雇用主となります。
したがって、 「日々紹介」の場合は、採用から給与計算等まで雇用主たる事業者が行わなければならないため、「日雇派遣」と比べると求人企業に対する負担は重くなります。このようなこともあり、古くからある「日々紹介」ではなく、近年は「日雇派遣」が主流であったというのが実情のようです。
そして、今回の改正により「日雇派遣」が原則として禁止されたので、昔にもどって「日々紹介」へ切り替えがすすんでいるようです。
②グループ企業内派遣の8割規制
派遣法は「労働力の需給の適正な調整を図る」ことを目的としています。そのため、「専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われる」場合には、他の企業のニーズを満たすことが出来ず、労働力の需給の適切な調整に寄与することは困難となります。
そのため、労働者派遣が「専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われる」場合には、一般労働者派遣事業の許可を与えてはならないとされています。
そして、グループ内の企業に派遣先を限ったような場合には、派遣先が複数になるものの上記の場合と弊害は同様であるとの考えから、グループ内への派遣が8割を下回らない場合には一般労働者派遣事業の許可が取り消されることになるようです。
次に(2)の派遣労働者の無期雇用化や待遇の改善については、以下のようにまとめられています。
・派遣元事業主に、一定の有期雇用の派遣労働者につき、無期雇用への転換推進措置を努力義務化
・ 派遣労働者の賃金等の決定にあたり、同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮・ 派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(いわゆるマージン率)などの情報公開を義務化
・ 雇入れ等の際に、派遣労働者に対して、一人当たりの派遣料金の額を明示
・ 労働者派遣契約の解除の際の、派遣元及び派遣先における派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当等の支払いに要する費用負担等の措置を義務化
上記は基本的に派遣元での対応ということになると思いますので、詳細な内容は割愛します。
最後に(3)の違法派遣に対する迅速・的確な対処についてです。
内容は以下のとおりです。
・ 違法派遣の場合、派遣先が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなす
・処分逃れを防止するため労働者派遣事業の許可等の欠格事由を整備
上記の一つ目の内容が、結果的には今回の改正で一番影響が大きいのではないかと思います。
つまり、派遣先が次のいずれかの違法派遣に該当する場合、当該派遣先から当該派遣労働者に対し、その時点での当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申し込みをしたものとみなされます。
ただし、派遣先が、その行った行為が次のいずれかの行為に該当することを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかったときはこの限りではないとされています。
イ)禁止業務への派遣受け入れ
ロ)無許可・無届の派遣元からの派遣受け入れ
ハ)期間制限を超えての派遣受け入れ
二)いわゆる偽装請負
よって、上記のような場合に「善意・無過失」でなければ、当該派遣労働者に対して労働契約の申し込みをしたものとみなされてしまうので、仮に派遣労働者が当該申し込みを承諾する意思表示をすれば、会社はその者を雇用する必要が生じるということになります。
なかなか恐ろしい内容ですが、この労働契約の申し込みの「みなし」は、「法の施行から3年経過後」とされているので平成27年の秋頃からの適用となる見込みです。
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