改正労働者派遣法と消費税増税は雇用にどのように作用するか?
”改正派遣法の影響は大きい?小さい?”というエントリで改正労働者派遣法の概要については述べましたが、大方の予想通り、改正法の施行日は平成24年10月1日に確定しました(政令第210号)。
今回の派遣法の改正は、非正規雇用から正規雇用への転換を促進することを一つの目的としているようですが、先日決定された消費税増税との関係を考えると、消費税増税は派遣法の改正目的とは逆方向に作用すると考えらえれます。
正規雇用者が減少し、非正規雇用者が増加しているのは、非正規雇用者を使用する方が低コストであるためです(少なくとも使用者の立場ではそのように考えています)。したがって、正社員でなくても任せることができる、あまり重要度が高くない仕事や高いスキルが不要な仕事については派遣労働者を使用することにインセンティブが働きます。
先日5%から(8%をはさんで)10%に増税されることが決定された消費税が、労働者派遣にどのように影響するかですが、使用者からすれば正規雇用者を非正規雇用に転換して消費税の増税による影響を緩和しようとするインセンティブが働くのではないかと考えられます。
つまり、正規雇用者に対する給料に対しては消費税が課税されないため仮払消費税は0でるあるのに対して、派遣元に対して支払う派遣労働者の費用は消費税の課税対象であり仮払消費税が生じるため、いずれにしても支払う必要のある人件費により消費税の納税額を削減することが可能となると考えられます。
仮に、正社員・派遣社員のどちらが担当してもよい業務を行っている正社員の月額人件費(月給・賞与・会社負担の法定福利費等々をすべて込みで考えた場合の総費用)が月額100であるのに対して、派遣社員の月額費用も100(税込)であったとしたら、払う金額が同じであっても消費税分派遣労働者を使用したほうが有利ということになります。
つまり、消費税率が上がったことによって、正社員の人件費を課税仕入れになる派遣労働者に切り替えるインセンティブが大きくなるという側面があると考えらえます。これを防止するためには、少なくとも税込で考えた場合の費用が正社員<派遣労働者という関係が必要ではないかと思いますが、現実問題としては難しように感じます。
以上のように考えると、改正派遣法が非正規から正規雇用への促進を目指している一方で、消費税の増税は逆方向に作用すりように思います。結局のところ、改正派遣法が目的としている派遣労働者の待遇改善によって、使用者にとってコスト面では不利であるものの流動性の点で派遣社員の方が有利という状況が形成されない限り、正規雇用を非正規化して消費税の増税の影響を緩和しようとするケースが生じてくるのではないかと考えられます。
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