東京電力の今後
東京電力の株価は3月31日末時点で466円となりました。結果的には前日と同じ価格となりましたが、一時は前日終値を上回っているので、新たな事象が発生しなければこの辺が適正価格と市場はみているということのようです。
しばらく配当は期待できませんが、前期ベースでの配当が達成された場合の利回りは12.8%となっていることと、なんだかんだ言っても電気は必要なので倒産さえしなければいずれ株価の上昇が期待できるということだと思います。
普通に考えると、これだけの影響があれば国有化され株の価値はなくなるのではないかと思ってしまいますが、どうやら原発事業者の損害賠償制度が現状の評価に関係しているようです。
全く知りませんでしたが、日本には「原子力損害の賠償に関する法律」という法律があり、原発事業者の責任を以下のように定められているそうです。
(出典:日本原子力産業協会「あなたに知ってもらいたい原賠制度(2010年版)」
上記の「原子力損害賠償責任保険」の金額は平成22年1月から1200億円となっているようなので、1200億円までは東電にダメージはないですが、そんな規模ではないのでそれを超えるのがどれだけなのかが問題となります。
また事業者の責任は無制限とする一方で、「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」が事業者責任の免責事由とされていることから、今回の震災が「異常に巨大な天災」に該当すれば、法律的には東電は免責されることになります。
この「異常に巨大な天災」が何かについては、「1961年5月30日開催の第38回国会参議院商工委員会で、加藤一郎東大教授は「異常に巨大な天災地変」について関東大震災の2~3倍を超えることが免責の目安であると示唆した。98年9月11日開催の第3回原子力損害賠償制度専門部会では、「関東大震災の『何』の2~3倍か」という疑問に対して、専門委員の1人が「一般的には震度・マグニチュード・加速度であろうが、3倍といったときには、おそらく加速度をいったものだろう」と語った。」(日経Web版)、とのことです。
とはいうものの、関東大震災の加速度については公式データがないそうなので「免責」されるのかどうかが今後の焦点になります。
確かに「巨大な天災」ではあると思いますが、バックアップ電源の系統を種類の違うものにしておけなかったのか等、東電にも責任がありそうなだけにそれだけで免責されてしまうのは腑に落ちません。海外からの好意ともいえますが、海外から原発の専門家を派遣する申し出を受けること自体、外部から東電は原発素人と認識されているような気がしてなりません。
2010年12月末時点で東電の連結BS上、長期借入金は1.6兆円、社債が4.5兆円あることからすると、銀行は東電を支援するでしょうし、社債の保有者が年金ファンド等である可能性が高いので社会的な影響を考えて国も東電を倒産させることはないものと考えられます。
最終的には、国有化で株主は責任をかぶり、債権者は保護されるというところで落ち着くのかなと思います。
法律で決まっているのであれば、後だしじゃんけんのように東電に責任を問うことはできませんが、直近5年でみても営業CFが最低でも5098億円(前期は9882億円)ある会社が免責されてしまうのはどうかと思います。仮に天災であっても3兆円までは免責しないというような設定が必要ではないかと思います。
この結果、原子力が割に合わないということであれば、新たなエネルギー開発に取り組む誘因ともなるのではないでしょうか?
今後の成り行きに注目です。
日々成長