2013年3月期決算の留意点(その1)
3月決算の第3四半期決算が終わったと思ったら、会計・監査ジャーナル2013年3月号に今3月期決算の実務ポイントという特集が組まれていました。もう3月決算か・・・
それはさておき、会計編として、以下の項目が取り上げられていました。
・適用2年目の会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準及び適用指針(比較情報の取扱いを含む。)に関する留意点について
・「包括利益の表示に関する会計基準」の改正について
・税制改正に伴う減価償却に関する会計上の留意点について
・「退職給付に関する会計基準」の適用に向けて
・連結範囲に関する留意点について
・税効果会計に関する留意点について
・有価証券の減損及び貸付金等の評価について
・年金資産の消失に係る会計処理に関する監査上の取扱いに関する留意点について
今回は最初の三つについて確認します。
1.会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準及び適用指針
適用2年目の確認ということで、最初に取り上げられていましたが、結論としては2年目だからといって特に追加が必要なことはありません。
3月決算のポイントを強いてあげれば、未適用の会計基準等に関する注記の対象として、平成24年5月17日に公表された「退職給付に関する会計基準」及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」が検討すべき基準となるという点だと思います。
なお、過年度遡及基準には、企業が未だ適用時期に関する経営上の判断を行っていない場合や、適用の影響について評価中である場合の取扱いについて規定されています。
会計基準等の適用時期について、未だ経営上の判断を行っていない場合、「既に公表されていものの、未だ適用されていない新しい会計基準等の適用時期について、財務諸表の作成時点において企業が未だ経営上の判断を行っていない場合には、「適用予定日に関する記述」においてその旨を注記する」こととされています。
また、「新しい会計基準等の適用による影響に関する記述」について、適用の影響につき定量的な情報を注記することとされていますが、財務諸表の作成時点において企業が未だその影響額を評価中の場合は、その事実を記述することで足りるとされています。
2.「包括利益の表示に関する会計基準」の改正
改正といわれると身構えてしまいますが、平成24年6月29日に公表された改正で、実務上それほど影響のある改正ではないと思います。
この改正では、個別財務諸表における包括利益計算書の取り扱いについて「当面の間、個別財務諸表には適用しないこととする」(第16-2項)と明記され、包括利益計算書は個別財務諸表では当面作成不要ということが明らかにされています。
また、この改正において、為替予約の振当処理から生じた評価差額が組替調整額等の注記の対象となるのかについて、「為替予約の振当処理については、実務に対する配慮から認められてきた特例的な処理であることを勘案し、組替調整額及びこれに準じた開示は必要ないと考えられる」(第31項(2))という記載が追加されています。
為替予約の振当処理で評価差額が生じるのは、外貨建予定取引をヘッジ対象として為替予約を行った場合です。この場合、当該予定取引が認識されるまで、決算日において為替予約を時価評価し、税効果考慮後の評価差額が純資産の部に繰延ヘッジ損益として計上されることになります。
従来、この繰延ヘッジ損益が組替調整額等の注記対象となるのかが明確ではありませんでしたが、上記の改正によって、組替調整額等の注記対象とはならないことが明らかになりました。
3.税制改正に伴う減価償却費の取扱い
平成23年度税制改正により、平成24年4月1日以後取得した減価償却資産については250%定率法から200%定率法に改正されています。
最近は定率法から定額法へ減価償却方法を変更している会社も増えてきていますが、税法の改正に合わせて定率法の計算方法を変更しているのが主流なのではないかと思います。すなわち、以下のような方法です。
①平成19年3月31日以前取得資産・・・旧定率法
②平成19年4月1日以降取得資産・・・250%定率法
③平成24年4月1日以降取得資産・・・200%定率法
上記のように変更している場合は、「法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更」として取り扱うこととされているので特に問題は生じません。
一方で、250%定率法適用時に平成19年3月31日以前の取得資産についても250%定率法に変更している場合に、今回の税制改正に合わせて200%定率法を適用しようとする場合には「自発的な会計方針の変更」と取り扱われるため正当な理由が必要となります。
また、税務上は事務処理の簡便化を図るため一定の届出を条件に、平成19年4月1日から平成24年3月31日に取得した減価償却資産を250%定率法から200%定率法へ変更することができるとされています。しかしながら、この場合「自発的な会計方針の変更」として正当な理由が必要となるため、会計上このような変更が正当な理由による変更と認められるのはかなり限定的と解説されています。
日々成長