役員退職慰労金の一任決議の場合、株主は内規等の閲覧を請求できる?
会社法上、役員退職慰労金も報酬に含まれるため支給については会社法361条に従い、定款に定めるか株主総会の決議が必要となります。
会社法361条においては、定款または株主総会決議で以下の三つが掲げられています。
①報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
②報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
③報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容
実務上は株主総会決議によるのが一般的で、かつ金額を明示して総会で承認してもらうのではなく以下のように、内規に従って支給することを取締役会に一任するというような内容で決議をとるのが通常です。
今回の本題はここからです。いままで意識したことがありませんでしたが、会社法施行規則82条では以下のように定められています。
(取締役の報酬等に関する議案)
第八十二条 取締役が取締役の報酬等に関する議案を提出する場合には、株主総会参考書類には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
(中略)
四 議案が退職慰労金に関するものであるときは、退職する各取締役の略歴
2 前項第四号に規定する場合において、議案が一定の基準に従い退職慰労金の額を決定することを取締役、監査役その他の第三者に一任するものであるときは、株主総会参考書類には、当該一定の基準の内容を記載しなければならない。ただし、各株主が当該基準を知ることができるようにするための適切な措置を講じている場合は、この限りでない。
(以下省略)
上記でハイライトした「各株主が当該基準を知ることができるようにするための適切な措置」とは何を意味するのでしょうか。
この点について、株主総会ハンドブック(商事法務)では旧商法施行規則13条4項で定められていた内容に変化はないとして内規等の基準を本店に備え置く必要があると述べられています。そして、株主から内規等の閲覧の請求があった場合、会社は当然応じる必要があるとしています。
上記の閲覧請求に持株数等の条件は付されていませんので、株主であれば内規を閲覧することができます。会社の立場からすれば、このような請求が株主からあった場合に、帳簿閲覧権が少数株主権であることと混同して対応を間違わないように注意が必要です。
最後に旧商法施行規則13条4項の条文を記載しておきます。
4 第 1項第六号に掲げる場合において、議案が一定の基準に従い退職慰労金の額を決定することを取締役、監査役その他第三者に一任するものであるときは、その基準の内容をも記載しなければならない。ただし、次に掲げる場合には、この限りでない。
一 当該基準を記載した書面を本店に備え置いて株主の閲覧に供している場合
二 当該基準を記録した電磁的記録を本店に備え置いて当該電磁的記録に記録された情報の内容を第 7条に定める方法により表示したものを株主の閲覧に供している場合
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