東京電力をこのまま存続させることは妥当なのか??
海江田経済産業相が15日の閣議後会見で、損害賠償の原資は東電の収益から捻出するとの考えを強調したことからすると、東電はこのまま生かされるという流れになっていますが、それでいいのかを考えてみました。
政府としては、電力の安定供給に支障が生じないようにするため保護が必要であり、年間2000億円程度の負担ならば対応可能なので年間2000億円程度を賠償させていこうという見解のようです。
ちなみに、平成22年3月期までの直近5年の計上利益の推移は以下のようになっています(東電の有価証券報告書より抜粋)。平成21年および平成22年の利益が落ち込んでいるのは、中越沖地震の影響で運転停止した柏崎刈羽原発の復旧費用やその電力を補うための燃料費の増加による影響と説明されています。
柏崎刈羽原発は全部で7号機まであって、全体で最大821万KWの発電量を有していますが、中越沖地震により全機停止し、このうち4機(最大出力491万Kw)が運転を再開しています(7号機(09年12月)、6号機(10年1月)、1号機(10年8月)、5号機(11年2月))。
一方でWikipediaの“東京電力”によると、福島第一の最大出力は496.6万KW、第二は440万KWということで、原発三か所で合計1730.8万KWが最大出力のようです。この他、火力発電の最大出力等をまとめると以下のようになります。
原発が約3割という話を聞きますが、これは最大出力ベースでの話のようです。実際の電力消費量にしめる稼働割合はどのようになっているのかを調べてみたところ、今一実態がよくわかりません。
ただ、電気事業連合会のHPで、「電源別発電電力量の実績及び見通し」として掲載されていた以下の表からすると実際の発電量も約3割のようです。
もちろん、火力発電をセーブして約3割なので、火力発電の割合をあげれば、原発がなくても電力が3割足りなくなるわけではありません。ただし、仮に福島の原発を0稼働とした場合の、東京電力管内の最大出力は約5,330万kwであり、夏場のピーク時の消費電力が5500万kw~6000万kwと見積もられているようなので、他の電力会社からの送電を考えても電力が足りなくなる可能性が否定できません。
少し話がそれましたが、安全に稼働できれば原子力発電は火力発電よりも低コストと言われていますので、仮に東京電力が原発を停止して、足りない分を火力で補おうとすれば、普通に考えて従来と同じ水準で利益がでるわけはありません。
仮に同水準で利益がでるのだとしたら、ものすごく非効率的な経営が行われていたということでしょう。(そうかんがえると、もしかしたら火力にしても利益の水準が変わらなかったりして・・・)
だとすると年間2000億円は無理なのではないかと思えますが、2000億円と決まれば、東電は年間2000億円払えるでしょう。なぜなら、電気料金を値上げすれば済む話ですから!
表面上、税金を投入しないで東電に責任を取らせるというポーズをとりつつ、実は国民(といってもこの場合は、実際に便益を享受している人たちに限られる点で一定の合理性はあるといえます)が負担することになるのです。
そう考えると、やはり納得がいきません。消費者よりも前に、現状の株主は責任を負うべきだと思いますので、一旦株は無価値にすべきだと思います。
その上で、東電を支援したいという人のために新株を発行すればいいと思います。資金が調達できれば、賠償金の原資もできるし、支援したい人と補償をきちんとして欲しい人の両方のニーズを満たすことができます。
あるいは、どうしても現在の株を無価値にできないというのであれば、現在の普通株に対しては30年間配当しないという方針を打ち出して、別途(可能であれば)配当優先株でも発行して資金を調達するというのがあるべき姿のような気がします。
日々成長