節電による消灯と労働安全衛生法違反の可能性
電力不足による停電を回避するため休憩時間だけに限らず一部の電気を消灯して業務を行っている会社が多いようです。極端な会社の場合には、ほとんど消灯に近い状態で作業を行っているエリアがあったりします。
かなり特別な事情によるものですが、そういえば労働安全衛生法に照明に関する規則があったはずだと思い内容を確認しました。
照明の明るさについては、事務所衛生基準の第10条に以下のように定められていました(なお、労働安全衛生規則604条にも同様の定めがあります)。
「事業者は、室の作業面の照度を、次の表の上欄に掲げる作業の区分に応じて、同表の下欄に掲げる基準に適合させなければならない。」
そして具体的な明るさとしては、以下のように定められています。
精密な作業:300ルクス以上
普通の作業:150ルクス以上
粗な作業:70ルクス以上
現在の一般的なオフィスの平均的な明るさは300ルクス~500ルクス位といわれていますので、150ルクスだと結構暗いようで、さらに70ルクスというレベルだと事務作業は不可能なレベルのようです。実際、ある会社でたまたま照度のチェックを行っていましたが、電気をすべてつけた状態で机の上の明るさが400ルクスと言っていましたので、平均的に300ルクス~500ルクスというのは本当なのではないかと思います。
性能のほどはわかりませんが、下記のような安いデジタル照度計もあるので、人事担当者で気になる方は照度をチェックしてみるのもいいのではないでしょうか。
ところで、上記の規則における「精密な作業」とか「普通の作業」がなにを意味するのかについてはこの規則には書いてありませんが、厚生労働省が平成14年に「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」というものを出しています。
VDT作業とは、同ガイドラインによると「事務所において行われるVDT作業(ディスプレイ、キーボード等により構成されるVDT(Visual Display Terminals)機器を使用して、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業)」とされています。
なんとなく難しいことが書いてありますが、プログラマーは当然として、パソコンを使用して行っている普通の事務作業 も該当するものと考えられます。したがって、いわゆるオフィス労働者の大半が該当するものと思われます。
この基準によると、照度については「ディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とすること」とされています。明るすぎてもいけないという特徴がありますが、普通の事務作業であれば基本的に300ルクスは必要と考えられます。
このことからすると、現在の一般的な事務作業は「精密な作業」に含まれると考えるのが無難ではないかと思います。
そうであるとすると、節電に協力して、事業所を暗くしすぎると労働安全衛生法に違反するということになってしまうのではないかという問題が生じます。
上記の基準は、労働安全衛生規則に定められているものですが、労働安全衛生法上の規定としては、労働安全衛生法第23条「事業者は、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、通路、床面、階段等の保全並びに換気、採光、照明、保温、防湿、休養、避難及び清潔に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければならない」を具体化したものと考えられます。
したがって、労働安全衛生法第23条違反ということであれば、同109条第1号により「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」が罰則となります。
加えて、長期間にわたり暗い事業場で作業を継続することを強いられたため視力が落ちた、具合が悪くなったというような主張をする労働者がでてくる可能性もあるので、注意が必要ではないかと思います。
なかなか厳しいですね。
日々成長。