25年3月期の見積の変更は76件(71社)
経営財務(3136号)が日本基準採用会社の連結財務諸表を対象に「会計上の見積りの変更」を調べたところ、平成25年3月期では76件(71社)であったとのことです。その中で最も多かったのが、固定資産についての耐用年数の変更で34件でした。
平成25年3月期に定率法から定額法に減価償却方法を変更した会社は70社でしたが、それと比較すると約半分となっています。これを多いとみるか少ないとみるかはひとそれぞれですが、個人的に耐用年数の変更がそれほど生じているとは思っていなかったので、実際の開示例を確認してみることにしました。
平成25年3月期に耐用年数を変更している会社の開示を確認してみたところ、建替え等が決定したこと等を理由として耐用年数を変更しているケースが多く目につきました。耐用年数を短縮あるいは延長している会社は、感覚的に同じ位の数だと思われますが、興味深いのは耐用年数を延長しているケースでは、耐用年数を見直した理由が記載されているケースが多いという点です。
会計上の見積の変更を行った場合、会計基準で求められるのは変更の内容と影響額のみなので理由の記載は不要ですが、利益を出す方向の変更はいらぬ憶測を生むので理由も記載しているケースが多いということではないかと思います。一方で、耐用年数を短縮しているケースでは、記載内容はシンプルなものになっています。
10社程度実際の開示例を示しておくと以下のようになっています。
(1)建物の建て替え等が決定したため耐用年数を変更しているケース
①フルサト工業㈱(トーマツ)
当連結会計年度において、連結子会社㈱ジーネットの東京支社及び東流センターの建替え計画を決定したため、耐用年数を取り壊し予定月までの期間に見直し、将来にわたり変更しております。これにより、従来の方法に比べて、当連結会計年度の営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益は、それぞれ75,532千円減少しております。
②日本無線㈱(トーマツ)
当社は、三鷹製作所および埼玉工場に保有する建物(建物附属設備を含む)および構築物の耐用年数について、当連結会計年度において、残存使用見込期間までに変更(短縮)しております。
この変更は、事業構造改革の一環として生産体制の再構築と国内外拠点への生産移管を進めることに伴い、三鷹製作所および埼玉工場に保有する建物(建物附属設備を含む)および構築物の耐用年数を見直したことによるものであります。
この変更により、従来の方法によった場合に比べ、当連結会計年度の営業利益、経常利益および税金等調整前当期純利益がそれぞれ557百万円減少しております。
③㈱ユニマットそよ風(大光)
京都ケアセンターそよ風の建物付属設備は、当連結会計年度において移転しており、利用不能となる資産の耐用年数を移転予定月までの期間に見直しをおこなったため、耐用年数を変更しております。
これにより、従来に比べて、当連結会計年度の営業利益及び経常利益はそれぞれ12,914千円減少しておりますが、税金等調整前当期純利益に与える影響はありません。
なお、セグメントに与える影響については、セグメント情報等に記載しております。
④トピー工業㈱(新日本)
当社は平成24年3月27日開催の取締役会において、豊橋製造所の製鋼設備を新鋭化することについて決議しました。本格操業開始は、平成27年4月の予定です。
これに伴い、除却見込みとなる有形固定資産について、当連結会計年度において、平成27年3月末を使用期限として耐用年数を見直し、減価償却費計上額を将来にわたり変更しています。
これにより、従来の方法に比べて、当連結会計年度の営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ356百万円減少しています。
なお、セグメント情報に与える影響は、当該箇所に記載しています。
⑤㈱アイフリークホールディングス(あずさ)
旧福岡本社が保有していた建物付属設備は、従来、耐用年数を5~15年として減価償却を行ってきましたが、平成25年4月1日に福岡本社の移転を行ったため、耐用年数を平成25年3月31日までの期間に変更しております。
これにより、従来の方法に比べて、当連結会計年度の売上総利益は5,343千円減少し、営業損失及び経常損失はそれぞれ9,221千円増加しておりますが、税金等調整前当期純損失に与える影響はありません。
また、東京支店五反田オフィスが保有していた建物付属設備及び備品は、従来、耐用年数を5~15年として減価償却を行ってきましたが、平成25年6月1日に東京支店赤坂オフィスへの統合移転を行ったため、耐用年数を移転月までの期間に変更しております。
これにより、従来の方法に比べて、当連結会計年度の売上総利益は50千円減少し、営業損失、経常損失及び税金等調整前当期純損失はそれぞれ1,018千円増加しております。
(2)耐用年数を短縮しているケース
①長瀬産業㈱(新日本)
当社及び一部の連結子会社は、当連結会計年度より、一部の有形固定資産の耐用年数を変更しております。
この変更に伴い、従来の耐用年数によった場合に比べ、当連結会計年度の減価償却費は90百万円増加し、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ88百万円減少しております。
なお、この会社は、同時に減価償却方法を定率法から定額法に変更しています。なお、減価償却方法の変更により減価償却費が2,138百万円減少していることと比較すると、上記の耐用年数の変更はそれほど大きなインパクトはありません。
②日本航空㈱(あずさ)
提出会社は、一部の航空機(予備部品を含む)について、当連結会計年度より、従来採用していた耐用年数から将来の使用想定を反映した耐用年数に変更しております。この結果、従来の方法に比べ、当連結会計年度の営業利益は3,452百万円減少し、経常利益及び税金等調整前当期純利益は3,192百万円減少しております。
なお、セグメント情報に与える影響は、セグメント情報等に記載しております。
③サンデン㈱(あずさ)
当社の連結子会社であるSANDEN INTERNATIONAL (U.S.A.),INC.は、当連結会計年度より一部の有形固定資産の耐用年数を変更しております。
この変更に伴い、従来の耐用年数によった場合に比べ、当連結会計年度の減価償却費が93百万円減少し、当連結会計年度の営業損失が同額減少、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ同額増加しております。
(3)耐用年数を延長しているケース
①共栄タンカー㈱(新日本)
船舶のうち、VLCCの耐用年数については、従来13年を採用しておりましたが、今回VLCCが13年を超えて使用されることが明らかとなったことを契機にVLCCの経済的な使用可能予測期間を見直し、耐用年数を15年に変更しております。
この変更は、VLCCについては従来は13年を前提にした使用計画によっていましたが、今後の採算も含めた使用計画をすべて見直し、15年使用する方針を決定したことにより、経済的使用可能予測期間としてより実態に即した耐用年数に変更するものであります。
この変更に伴い、従来の方法に比較して、当連結会計年度の営業利益、経常利益および税金等調整前当期純利益が451,211千円それぞれ増加しております。
②㈱エクセディ(あずさ)
当社及び連結子会社は、当連結会計年度より、当社グループのグローバル展開の進展を踏まえ、同種かつ同一条件下で使用される有形固定資産について物理的耐用年数及び製品寿命等の経済的耐用年数を総合的に考慮して耐用年数を見直しております。
この変更により、従来の耐用年数によった場合と比べて、当連結会計年度の減価償却費が 190百万円減少し、営業利益が181百万円、経常利益及び税金等調整前当期純利益がそれぞれ 182百万円増加しております。
③川崎汽船㈱(新日本)
当連結会計年度において平成24年度を初年度とする中期経営計画を策定したことを受け、船隊整備計画検討の一環として、船舶使用実績、新たに入手した整備報告及び船腹需給見通しを基に、船舶使用方針を見直しました。その結果、コンテナ船、自動車船及び油槽船について、従来の耐用年数よりも長期間の使用が見込めることが判明したため、コンテナ船及び自動車船については耐用年数を従来の15年から20年に、油槽船については耐用年数を従来の13年から20年に変更しました。
また、ドライバルク船については、国際海事機関が基準化したバラストタンク新塗装基準適用の船舶が当連結会計年度において初めて修繕ドック入りしたことにより、防食性能の向上を裏付ける情報が入手可能となりました。その結果、従来の耐用年数よりも長期間の使用が見込めることが判明したため、当該新塗装基準適用の船舶を対象として耐用年数を従来の15年から20年に変更しました。
これにより、従来の方法に比較して、当連結会計年度の営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益が7,360百万円それぞれ増加する結果となりました。
④日本ケアサプライ(トーマツ)
当社が保有するレンタル資産は、従来、主な耐用年数を3年~4年として減価償却を行ってきましたが、当連結会計年度において、主な耐用年数を3年~6年に見直し、将来にわたり変更しております。
この変更は、介護保険制度施行から10年が経過し、取得から除却までのデータが蓄積及び整備されたことを契機としてレンタル資産の使用状況を総合的に検討した結果、使用可能期間が従来に比べ長期化する傾向にあることによるものであります。
これにより、従来の方法に比べて、当連結会計年度の営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ389,631千円増加しております。
日々成長