条文の読み方(その4)-「係る」と「関する」
今回は条文の読み方(その4)ということで、「係る」と「関する」についてです。参考資料は「条文の読み方」(法制執務用語研究会)です。
用途
いずれも、ある言葉とある言葉をつなぐために用いられる用語で、前の言葉があとの言葉の内容を特定したり、意味を説明したり、あるい目的語の関係にあったりします。
「係る」の使い方
用途で述べたとおり、「係る」の使い方には様々なものがありますが、代表的な用法としては、ある語句とある語句を直接的に強く結びつけることを意識して用いられる用法があります。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(介護休業の申出)
第十一条
2 前項の規定にかかわらず、介護休業をしたことがある労働者は、当該介護休業に係る対象家族が・・・(以下省略)
上記は、”労働者が行う介護休業申出の対象となっているその対象家族という意味で、「介護休業申出」と「対象家族」が直接的に強く結びついて、その範囲を画定しています。”
上記が代表的な用法ということですが、上記の他にも以下のような使用法があります。
①「・・・の」、「・・・が行う」という意味で用いられるケース
②「・・・・に属する」、「・・・の対象になっている」という意味で用いられるケース
③「・・・・に関係する」という意味で用いられるケース
「係る」については、このように色々な使い方があるので、明確にどの用法かを考えるというよりは、上記のような読み方を当てはめて意味がとおれば、あまり深く考えなくてもよいのではないかという気はします。
例えば、以下の例を考えてみます。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(育児休業の申出)
第五条
2 前項の規定にかかわらず、育児休業(当該育児休業に係る子の出生の日から起算して八週間を経過する日の翌日まで・・・(以下省略)
「当該育児休業に係る子」というのは、育児休業の対象となっている子という意味で考えれば特に問題はないと思います。当該育児休業と子を直接的に強く結びつける意図があるのかもしれませんが、特にそう考えなくても意味が取れるのであれば問題はないのかなと思います。
「関する」の使い方
「・・・に関係する」、「・・・についての」という意味合いで、二つの語句をつなぐ場合に使用されます。この点については「係る」と同様ですが、「係る」よりも”より緩やかな”範囲での結び付きを表す場合に使用されます。
個人的には、普通に文章を書いていると「係る」も「関する」も同じように使ってしまいますので、いまいちピンときませんでしたがが、以下の例でいわんとすることが分かった気がします。
日本国憲法の改正手続に関する法律
(協議会の事務)
第十四条 協議会は、次に掲げる事務を行う。
一 国会の発議に係る日本国憲法の改正案(以下「憲法改正案」という。)及びその要旨並びに憲法改正案に係る新旧対照表その他参考となるべき事項に関する分かりやすい説明並びに憲法改正案を発議するに当たって出された賛成意見及び反対意見を掲載した国民投票公報の原稿の作成
「係る」が登場する部分は、「国会の発議」による「日本国憲法の改正案」、「憲法改正案」の「新旧対照表」と対象が明確(直接的)であるのに対して、「関する」が登場する部分は、「その他参考となるべき事項」の「分かりやすい説明」というように、そもそも対象が曖昧な「その他」のものとなっているので、そういった意味では「係る」よりも結びつきが間接的になっていると考えられます。
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