特別支配株主の株式等売渡請求権-改正会社法が公布
会社法の一部を改正する法律案」(平成26年法律第90号)および「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」(平成26年法律第91号)が6月27日に公布されました。
施行日は公布日から1年6か月以内とされていますが、平成27年4月1日から施行となる可能性が高いようです。
さて、今回の会社法改正では、社外取締役を置いていない場合に理由の開示が求められることになる等、コーポレートガバナンス関連の項目にばかり注目していましたが、特別支配株主の株式等売渡請求が新たに認められることになっています。
一見すると少数株主にとって酷な制度ですが、現在においても議決権の10分の9以上を有していれば、定款変更→すべての株式に全部取得条項を付与→全部取得条項を発動というような過程を経て、少数株主を排除することは可能です。ただし、株主総会の特別決議等が必要であり、手間もコストもかかります。
改正会社法における特別支配株主の株式等売渡請求では、株主総会の決議は不要で、以下のような手続きで少数株主から株式を取得することができます。なお「株式等」の「等」には新株予約権が含まれますが、以下では株式を前提として話をすすめます。
- 以下の事項を会社に通知
- 株式の対価として交付する金銭の額またはその算定方法
- 売主に対する上記金銭の割り当てに関する事項
- 特別支配株主が売渡株式を取得する日
- 会社(取締役会)が売渡請求を承認
- 会社が売渡株主に通知又は広告(取得日の20日前まで)
- 株式等売渡請求<に関する書面等の備え置き/li>
- 特別支配株主は取得日に売渡株式等の全部を取得する等(本店)
- 売渡株式等の取得に関する署名等の備え置き等(本店)
特別支配株主の株式等売渡請求では、少数株主の同意の有無にかかわらず株式を取得することが可能です。しかも、基本的には対価の支払いの有無にかかわら特別支配株主が定めた取得日に株式が移転することになります。
事後的には、売渡株式等取得の無効の訴え(改正法846条の2)が認められています。また、対価が支払われない場合には、債務不履行を理由として売買契約の解除や損害賠償も可能となります。
さらに、法務省令によって、会社が売主に対して対価の公務の見込みを開示することを求めるということが検討されているそうです。
対象会社の総株主の議決権の10分の9以上を有する場合に限られるものの、使用する可能性はあるので頭に入れておいたほうがよい制度ではないでしょうか。
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