学生バイトが学校から移動中に災害にあった場合に通勤災害となるか?
学生のアルバイトが大学で授業を受けた後、出社途中で災害にあった場合、通勤災害に該当するのかが今回のテーマです。
通勤災害とは、「労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡」(労災保険法7条1項2号)をいうとされており、さらに「通勤とは、労働者が、就業に関し、次の掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うこといい、業務の性質を有するものを除くものとする」(労災保険法7条2項)とされています。
そして移動として掲げられているのは以下の三つです。
- 住居と就業の場所との間の往復
- 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
- 1のに掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)
大学生にとって、大学で授業を受けてからアルバイトへ行くというのは、ある意味「合理的な経路」だと思いますが、残念ながら労災保険法で掲げられている三つの移動のいずれにも該当しません。
ちなみに、労災保険法における「住居」とは、「労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所で、本人の就業のための拠点となるところ」とされていますので(労働者災害補償保険法コンメンタール)、大学を「住居」とするのには無理があります。
では、通勤経路からの一時的な逸脱と考えることはできないかが問題となります。
労災保険では、原則として「労働者が、移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の移動は、通勤としない」(7条3項)とされていますが、以下の例外が認められています。
すなわち、「逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって一定のものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、通勤とする」というものです。
大学生が、大学の授業にだけ出席するために大学に行って、そこから出勤したような場合はこの例外に該当しないだろうかという点が問題となりますが、結論としては残念ながら例外には該当しないと考えられます。
日常生活上必要な行為であって一定のものとは、労働者災害補償保険法施行規則8条で以下のものが定めれれています。
- 日用品の購入その他これに準ずる行為
- 職業訓練、学校教育法第一条 に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であつて職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
- 選挙権の行使その他これに準ずる行為
- 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
- 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)
上記の2からすると、大学で授業を受けることは日常生活上必要な行為に該当するのではと期待を持ちますが、職業訓練のような「職業能力の開発向上に資するものを受ける行為」がこの対象となっており、あくまで就業を中心に職業能力を高めるための教育という位置づけであり、大学生が通常の授業をうけるだけではこの例外には該当しないと考えられます。
結局のところ、大学生が大学を経由して出勤するようなケースにおいては、住居から大学への移動は大学が目的地であり、これを通勤の一部とみることは困難ということになり、大学から出勤途上で災害にあっても通勤災害とは取り扱われないということになります。
学生の立場からすると、万一のことを考えるのであれば、一度帰宅して、居住地の側でバイトをするのがベターということになります。
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