決算期が異なる在外子会社との債権債務相殺消去から生じた消去差額の取扱
今回は期ズレで連結している在外子会社との債権債務相殺消去から生じる換算差額の取扱いについてです。
子会社の決算日が連結子会社と異なる場合、子会社は連結決算日に正規の決算に準ずる合理的な手続を行うことが原則とされています(連結財務諸表に関する会計基準16項)。
つまり、仮決算を行うのが原則です。四半期決算が導入されて相当期間経過しているため、親会社の決算日が3月末で子会社の決算日が12月末のように3か月ズレの場合には、仮決算を選択してもそれほど負荷は変わらないことも考えられ、仮決算を選択した場合は基本的に債権債務の相殺から換算差額は発生しないはずです。
しかしながら、期ズレが1か月というようなケースでは、実務上仮決算は行いにくく、期ズレでの連結が選択されると考えられます。
3か月ズレであれ1か月ズレであれ、「子会社の決算日と連結決算日の差異が3か月を超えない場合には、子会社の正規の決算を基礎として連結決算を行うことができる」(連結会計基準注4)とされていますので、期ズレで在外子会社を連結する場合、債権債務の相殺から生じる換算差額の取扱が問題となります。
「子会社の決算日と連結決算日が異なることから生じる連結会社間の取引に係る会計記録の重要な不一致について、必要な整理を行うものとする」(連結会計基準注4)ため、親会社が3月末決算、子会社が2月末決算の場合、親子間で3月に行われた取引が重要である場合には調整を行う必要があります。
これにより、子会社決算日後の親子間取引の調整が行われたとすると、他の要因がなければ取引通貨ベースで親子間の債権債務に差異は生じないということになります。
しかしながら、換算については、「在外子会社等の決算日が連結決算日と異なる場合、在外子会社等の貸借対照表項目の換算に適用する決算時の為替相場は、在外子会社等の決算日における為替相場とする」(外貨実務指針33項)とされているため、たとえ取引通貨ベースでの債権債務が一致していたとしても、適用される為替レートが異なることによる差異が発生します。
上記から、期ズレが生じている場合の在外子会社のBS項目の換算は子会社決算日のレートを適用すべきことは明らかですが、一方で、換算によって生じた消去差額をどのように処理すべきかについては明確にされてはいません。
この差額については「その他資産」あるいは「その他負債」で処理してしまうということも考えられますが、「為替換算調整勘定の会計実務」(新日本有限責任監査法人著)では当該差額は「在外子会社等の個別財務諸表の換算の結果生じたものであり、未実現の為替差額としての性格を有すると考えられることから、為替換算調整勘定として処理するものと考えられる」と述べられています。
確かに理論的にはそのように考えるのが妥当だと思いますが、債権債務に重要な不一致がない場合の消去差額は「その他資産」「その他負債」などの勘定で消去され、この場合には為替の影響を切り出すことはしないこと、期ズレ期間内に為替相場に重要な変動があった場合には、在外子会社で正規の決算に準ずる合理的な決算を行うことが求められており(外貨実務指針33項なお書き)、仮決算が求められない程度であれば重要性が乏しいと考えられること、および処理の単純化という観点から「その他資産」・「その他負債」で処理するという選択もありうると考えられます。
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