エナリスの第三者調査委員会の調査報告書が公表されていました
昨日提出された四半期報告書を確認した時にはHPに掲載されていませんでしたが、昨日付で「第三者調査委員会調査報告書受領に関するお知らせ」が開示されていることに気づきました。
私が確認した時は過去の四半期報告書の訂正についてもEDINETにしか掲載されていなかったのですが、現段階ではHP上に数多くの訂正資料が掲載されています。おそらく昨日の夜遅く(午後9時~12時)にHP上にはアップされたものと推測されます。
「調査報告書(公表版)」ということで、登場人物がアルファベットで記載されており、かつ、登場人物が多いので非常に読みにくい気がしますが、「調査期間が極めて限定的であったため、事実関係及びかかる事実関係を前提として当社が行うべき適切な会計処理のみを報告対象としております」とされているにもかかわらず、調査報告書では「会計処理上指摘すべき事項があると判断した」として以下の7つの取引を取り上げています。
調査期間が極めて限定的なのに7つも見つかってしまいましたか・・・という感じです。具体的には以下の七つが取り上げられています。
- ディーゼル発電機ユニットにかかる取引
- エネ建株式にかかる取引
- CZ社株式及び匿名組合出資持分にかかる取引
- 太陽光発電所にかかる取引
- EZ社との太陽光発電システム機器にかかる取引
- 木崎バイオディーゼル発電所にかかる取引
- FALCON SYSTEMにかかる取引(対5社)
どうやら最初の「ディーゼル発電機ユニットにかかる取引」というのがWEBサイトで取り上げられていた案件のようです。
同社の以前のリリース「一部の WEB サイトの書込みについて」(平成26年10月24日)では以下のように記載されていました。
「テクノ・ラボ社は、発電事業を計画していた会社で、当時は東京都千代田区平河町二丁目4番8号に本社が所在しておりましたが、現在は取引関係もなく所在は不明です。当社は、テクノ・ラボ社より発電設備の購入意向を受け、売掛金に見合う他社発行の小切手を担保として受領し、入金まで設備の所有権を留保する等の債権保全を図りながら平成 25 年 12 月 13 日に発電設備を引渡し、10 億円で販売いたしました。当社は、発電事業開始後の電力を買い取ることを企図しておりました。
しかしながら、平成 26 年5月頃テクノ・ラボ社の発電計画について実行性の疑義が生じ、当社の電力買取りによる事業メリットが見込めないと判断したため、当社は他の発電事業者を招聘し、平成 26 年6月にテクノ・ラボ社に対する売掛金 10 億円の代金不払による契約解除を通知し、債権債務を解消すると同時に当該発電設備を、当該発電事業者の事業性を評価した東証一部の金融機関に販売いたしました。また、販売代金 10 億円は、当該金融機関より平成 26年 12 月末迄に入金されます。」
このリリースを読んだときに「売掛金に見合う他社発行の小切手を担保として受領し」ていたのに、単に契約解除して他社に転売したように読める意味がよくわかりませんでしたが、調査報告書でこの意味がわかりました。
調査報告書のP25によれば、売買代金を当初の支払期限に支払うことが困難であるという連絡を受けた段階で、延長した支払期日付の香港の銀行の小切手(額面79,724,400香港ドル)を受領したとされています。その後支払期限が再延長されましたが、それでも支払いがなされませんでしたが、当該小切手について支払呈示や取立委任はされませんでした。これは、「AJ銀行への支払呈示にはAJ銀行口座を香港に開設する必要があり時間がかかること、取立委任委ついてAI銀行千住支店に一般論として問い合わせたところ、AJ銀行の小切手は偽造されていることがあり対応できないことが多いとの回答を得たこと」がその理由とされています。
取引の過程で会社は上記の事実を把握していながら、以前のリリースにおいて「売掛金に見合う他社発行の小切手を担保として受領し」とあたかも何の問題もないかのような表現を使用しているのは悪意を感じます。なお、この小切手については契約解除後も返還されていないそうです。
また、さすがにそれは・・・という内容も述べられています。この取引の発端となった福島での発電プロジェクトに関して、発電事業者となることが予定されていた会社の100%株主(と聞いていた)aw氏との基本合意書の締結に際して、「本基本合意書は、エナリスではなく実際には存在しない「株式会社エナリス・アセットマネジメント」名義で締結され、押印欄には株式会社エナリス・パワー・マーケティングの印章が押捺されている。池田社長によると、補助金取得額が減少することを懸念して、将来的に「株式会社エナリス・アセットマネジメント」を設立することを企図し、エナリス名義としなかったとのことである(ただし、その後も「株式会社エナリス・アセットマネジメント」が設立されることはなかった)。
当時は上場企業ではなかったわけですが、上場企業であろうとなかろうと存在しない会社名義で合意書を作成するのはさすがにまずいと思わなかったのでしょうか。
なお上記のaw氏にあ基本合意書締結後5000万円融資するという条項に基づき融資が実行されており、この5000万円については、結果的に「発電所建設工事のアレンジメント業務等の委託」という名目に化けています。この金額が妥当か否かについては触れられていませんが、最終的に当初の計画が頓挫していることから調査報告書では「特別損失」として計上すべきであったと結論付けています。
また、この取引では18台の発電機を輸入していますが、販売先が変更される過程において発電機の3台が盗難にあっていることが明らかにされています。本当にそんなことがおこるのだろかという感じすらすらします。
本当にひどすぎますが、多少救われるのは、社長と常務が存在しない会社で基本合意書を作成しているような状況下において、取締役会では「出席取締役から、系統連系等の必要な手続きがなされているか等、工事が平成25年3月末に終了することが可能であることを確認する必要があるとの意見が出て承認に至らず、保留扱いとなった」というように良識のある方もいたという点です。
同社が昨日開示した短信での通期業績予想は従来の22億円の営業利益から△1,000万円に修正されています。
過年度は修正後も利益がでていますが、従来は営業利益が前期比42.5%増となっていたのが、実は△1%でしたというのは申請期の数値だけに投資家に与えた影響は大きかったのではないかと思います。
気になるのは、来期以降は利益体質に戻るのかという点と、上場は維持されるのか?という点です。
修正後もマザーズの上場廃止基準には抵触していないという理屈で上場が維持されることは考えられます。現に、オリンパスもかなりひどい粉飾でしたが上場は維持されています。
ただし、オリンパスとエナリスでは規模が違います。オリンパスについて東証は「虚偽記載の内容については、財務諸表への影響は長期間に及んでいたものの、同社の事業規模を踏まえれば、その利益水準や業績トレンドを継続的に大きく見誤らせるものであったとまではいえず、同社の本業における経営成績を拠り所とした市場の評価を著しく歪めたものであったとまでは認められませんでした」というような見解を公表しています。IPO申請期の重要な虚偽記載は「市場の評価を著しく歪めた」ともいえるので、オリンパスとは違うという理屈で上場廃止という理屈も考えられます。
ライブドアは有価証券報告書の虚偽記載を理由として上場廃止となりましたが、理由について東証は「平成16年9月期連結財務諸表について、経常損失を計上すべきところを多額の経常利益を意図的かつ組織的に計上した。これは、その金額において重大であり、投資者の投資判断にとって重要な情報を故意に偽った点で悪質であり、これを組織的に行った点で上場会社としての適格性を強く疑わざるを得ないものである」としています。
さて、選挙も終わりますし、果たして東証はエナリスをどっち寄りの会社と判断して処分するのか注目です。
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