平成27年度税制改正による受取配当金の益金不算入制度の改正と税効果への影響
平成27年度税制改正が3月31日に公布され、受取配当金の益金不算入について以下のとおり改正が行われました。
(出典:「平成27年度税制改正」財務省)
これにより持株比率が25%以上のため受取配当金が100%益金不算入となっていた国内持分法適用会社がある場合、留保利益の税効果に影響が生じる可能性があります。
もっとも、影響があるのは持株比率が25%以上1/3以下の国内持分法適用会社と影響範囲は限られますが、益金不算入割合が100%→50%となっていますので、比較的大きな影響額が生じる会社もあるかもしれませんので注意が必要です。
また、これも影響があるケースは限られますが、平成27年度税制改正により、外国子会社からの配当金についても一部益金不算入制度が見直されています。
これは、外国子会社において損金に算入される配当を外国子会社の益金不算入制度の対象外とするというものです。これは海外子会社で損金として扱われ課税されず、国内親会社でも課税されないという国際的な二重非課税を防止するための改正とされています。
では、配当金が損金算入される国はどこなのかですが、基本的にはブラジルを考えておけばよいようです。オーストラリアについても優先株式の配当は損金算入できるようなので、ブラジルとセットで取り上げられていることが多いですが、通常の配当については損金算入の対象とはならないようです。
さて、この改正が税効果会計にどのように影響するかですが、この点については2015年4月3日日本公認会計士協会から「税効果会計に関するQ&A」の改正案(意見募集期限:2015年5月8日)が公表されており、「税効果会計への影響」の部分での主な改正案部分としては以下のようになっています。
(一部抜粋:下線部が改正案で追加されている部分)
したがって、上記の親会社の個別財務諸表における税負担額、すなわち、配当等の額に係る費用に相当する金額(配当等の額の5%)に親会社の実効税率を乗じた額と配当等の額に係る外国源泉所得税の額の合計額として見積もられる額について連結財務諸表上、繰延税金負債として計上されることになります。
一方、内国法人が外国子会社から受け取る配当等の全部又は一部が外国子会社の本店所在地国の法令において損金算入することとされている場合は、受け取る配当等の額について、親会社の個別財務諸表における税負担額から、子会社の個別財務諸表において損金算入され親会社の税負担額が軽減されると見積もられる税額を控除した額を、連結財務諸表上、繰延税金負債として計上することになるものと考えられます。
前半部分は、今回改正が提案されていますが、従来からの実務をわかりやすく書いただけであり特に問題は無いと思います。
後半部分が、平成27年度税制改正に対応して追加が予定されている部分となります。ポイントは「親会社の個別財務諸表における税負担額から、子会社の個別財務諸表において損金算入され親会社の税負担額が軽減されると見積もられる税額を控除した額を、連結財務諸表上、繰延税金負債として計上する」という部分です。
「親会社の個別財務諸表における税負担額」は、益金不算入となることによる税負担増なので特に問題はありません。一方で「子会社の個別財務諸表において損金算入され親会社の税負担額が軽減されると見積もられる税額を控除した額」が何を意味しているのかですが、外国税額控除の影響額を意味しているものと思われます。
海外子会社からの配当は、改正前は外国税額控除の対象外とされていたため、「配当等の額に係る費用に相当する金額(配当等の額の5%)に親会社の実効税率を乗じた額と配当等の額に係る外国源泉所得税の額の合計額」を繰延税金負債として計上することが求められていましたが、平成27年度税制改正により海外子会社で損金算入されたことにより外国子会社受取配当金益金不算入制度の適用対象外とされた配当等に対して課税される外国源泉税等は、外国税額控除の対象とされることとなっています。
なお、配当が損金算入される海外子会社からの配当の益金不算入制度の適用除外は、原則として平成28年4月1日以降に開始する事業年度に受取る配当等の額から適用されることとされていますが、平成28年4月1日において保有する外国子会社の株式又は出資に係るものについては平成30年3月31日までは従前どおりの取扱とするという経過措置が設けられています。
これらを踏まえてブラジル子会社の留保利益の税効果を見直すことが必要となる可能性があります。
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