計算書類における会計方針の変更の注記の1株当たり情報の取扱いは?
平成27年3月期は計算書類においても退職給付会計基準の改正に伴い会計方針の変更の注記が記載されるケースが多いと考えられます。
金商法の財務諸表における会計方針の変更の注記においては、1株当たり情報に与える影響額の注記が必要となりますが、計算書類上の取扱いがどうなっているのかが今回のテーマです。
会社計算規則の関連条文を確認してみると、会社計算規則102条の2で以下のように定めらています。
(会計方針の変更に関する注記)
第百二条の二 会計方針の変更に関する注記は、一般に公正妥当と認められる会計方針を他の一般に公正妥当と認められる会計方針に変更した場合における次に掲げる事項(重要性の乏しいものを除く。)とする。ただし、会計監査人設置会社以外の株式会社及び持分会社にあっては、第四号ロ及びハに掲げる事項を省略することができる。
一 当該会計方針の変更の内容
二 当該会計方針の変更の理由
三 遡及適用をした場合には、当該事業年度の期首における純資産額に対する影響額
四 当該事業年度より前の事業年度の全部又は一部について遡及適用をしなかった場合には、次に掲げる事項(当該会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難なときは、ロに掲げる事項を除く。)
イ 計算書類又は連結計算書類の主な項目に対する影響額
ロ 当該事業年度より前の事業年度の全部又は一部について遡及適用をしなかった理由並びに当該会計方針の変更の適用方法及び適用開始時期
ハ 当該会計方針の変更が当該事業年度の翌事業年度以降の財産又は損益に影響を及ぼす可能性がある場合であって、当該影響に関する事項を注記することが適切であるときは、当該事項
(以下省略)
上記から会社法の計算書類で要求されている影響額の注記項目は以下のようになります。
(1)遡及適用した場合(3号)
「当該事業年度の期首における純資産額に対する影響額」
(2)(全部又は一部について)遡及適用しなかった場合(4号)
「計算書類又は連結計算書類の主な項目に対する影響額」等
いずれに該当するとしても財規で要求されている1株当たり情報に与える影響の注記は求められていませんので、計算書類上は1株当たり情報にあたえる影響額の注記は不要ということになります。
会社計算規則第102条の2第1項第4号では、さらりと「遡及適用しなかった場合」と記載されていますが、これには次の事項が含まれるとのことです(「過年度遡及処理に関する会社計算規則の一部を改正する省令の解説」高木弘明・新井叶夢 商事法務No.1930)。
- 会計基準等の改正等に伴う会計方針の変更であって経過的な取扱い(適用開始時に遡及適用を行わないことを定めた取扱い等)に従い、過去の事業年度の全部または一部につき遡及適用をしなかった場合
- 遡及適用の原則的な取扱いが実務上不可能な場合
- 当該会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合
- 遡及適用をすることにつき重要性に乏しいために遡及適用をしなかった場合
- 会計上の変更および誤謬の訂正に関する会計基準以外の会計慣行が遡及適用を求めていないため、遡及適用をしなかった場合
今回の退職給付会計基準の改正による勤務費用の算定方法や割引率の決定方法の変更については、上記の1.に該当し「遡及適用しなかった場合」に該当すると考えられます。
そのため、会社法の計算書類は単年開示であるものの「主な項目に対する影響額」を注記する必要があるということになり、「当連結会計年度の期首の退職給付に係る負債がXXX百万円増加し、利益剰余金がXX百万円減少しております。また、当連結会計年度の営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれXX百万円増加しております。」というような注記が必要となります。
最後に会計方針の変更が行われた場合の計算書類上の注記の記載事項をパターン別にまとめておくと以下のようになります。
(「過年度遡及処理の会計法務税務 第2版」P444 新日本監査法人等)
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