平成26年度有報の虚偽記載等による課徴金命令は7件
経営財務3220号に「証券監視委 有報の虚偽記載等で7件の課徴金納付命令勧告」という記事が掲載されていました。
証券取引等監視委員会が2015年6月30日に公表した「証券取引等監視委員会の活動状況」の内容に関するもので、当該公表資料によると平成26年度の開示検査対象は18件で、このうち課徴金命令が下されたのが7事案(対象8社)であったとのことです。
平成 26 年度における開示規制違反に対する課徴金納付命令勧告事案は、有価証券届出書や有価証券報告書等の虚偽記載によるもので、具体的には売上の過大計上、貸倒引当金繰入額の過少計上、架空資産の計上及び仕掛品の過大計上、大量保有者の所有株式数や株券等保有割合の不適切な開示などによるものです。
平成26年度の課徴金最高額は1億 9,426 万円で株式会社SJIに係る有価証券報告書等の虚偽記載によるものです。続いて金額が大きいのはJALCOホールディングスの1億 5,150 万円 、日本アセットマーケティングの1億915万円となっています。
課徴金金額トップのSJIは、「売買取引を装うなどして、実質破綻状態にあった当社役員に資金を流出させていたにもかかわらず、同流出資金について貸倒引当金繰入額を計上しなかった上、同役員の知人が代表取締役を務める会社等に対する貸付金について適切な貸倒引当金繰入額の計上等をしなかった。」という事案です。
同社の「証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告について」によると課徴金の対象となった有価証券報告書等は以下とされています。
監査法人を確認してみると以下のように変動しています。
平成21年3月期 新日本有限責任監査法人
平成22年3月期 新日本有限責任監査法人
平成23年3月期 新日本有限責任監査法人
平成24年3月期 新日本有限責任監査法人
平成25年3月期 紀尾井町公認会計士共同事務所
平成26年3月期 清和監査法人
平成27年3月期 赤坂・海生公認会計士共同事務所
というわけで、課徴金対象の大部分は新日本有限責任監査法人時代のものとなっています。詳細については、こちらのP99をご参照ください。虚偽記載のある有価証券報告書等を用いて資金調達を行ったことが課徴金の対象となっています。
ちなみに平成22年3月期に同社には社外取締役が6名、平成23年3月期には社外取締役が5名いました。社外取締役が多いからといって問題が生じないわけではないというよい事例です。
2番目に課徴金金額が大きいJALCOホールディングス株式会社のケースは、基本的に売上の過大計上によるもので、これも虚偽記載のある有価証券報告書等を用いて資金調達を実施したことが課徴金の対象となっています。
SJIほど長期間にわたるものではありませんが、平成25年3月期第1四半期から平成26年3月期第3四半期までの報告書で売上の過大計上が行われています。
なお、同社の監査法人は平成24年3月期から継続してKDA監査法人で、1名ではありますが、継続して社外取締役が選任しています。
最後に課徴金の金額としては4,336万円と上記と比較すると小さいですが、インスパイアー株式会社のソフトウエア仮勘定の架空計上等も平成22年3月期第2四半期から平成25年3月期第2四半期まで比較的長期にわたり行われていました。
今話題の東芝も、資金調達を行ってれば課徴金の対象となるのではないかと思います。
日々成長