(株)グラフィコのIPO承認取消の原因は?
日本郵政の上場後、新規上場会社が多くなっていますが、12月16日に日本取引所から12月25日に東証マザーズに上場予定であった同社の上場承認を取り消した旨が公表されました。
“同社から新規上場を取り止める旨の申出がありましたので”ということで、取引所が何らかの理由により積極的に承認を取り消したわけではないようです。
同社のHPに掲載されている「募集株式発行及び株式売出しの中止に関する取締役会決議のお知らせ」によれば、「本日開催の当社取締役会において、今期業績の進捗を慎重に確認すべきと判断し、当該確認に時間を要することから、募集株式発行及び株式売出しの中止と、それに伴う上場予定を暫時延期することを決議」したとのことです。
要は業績が予想通りにいかない可能性が高くなってきたということですが、2015年春のG-shock以降、新規上場会社のの業績予想には過剰というくらいうるさくなっている取引所の審査をクリアしたにもかからわず今期業績の進捗を慎重に確認すべき状況が生じたというのは普通ではありません。
上場承認が取り消されたことで取引所のHPに掲載されていたIの部なども削除されてしまっているので、この会社がどういう状態にあったのかが今となってはよくわかりませんが、IPO銘柄を取り上げているサイトによれば、主幹事は大和証券、想定発行価格は1,970円だったようです。
6月決算の化粧品メーカーで直前期(平成27年6月期)は、売上高17.9億円、経常利益1.7億円、申請期第1四半期(平成27年9月期)は売上高5.3億円、経常利益0.9億円となっています。単純に4倍して考えてよいのかは分かりませんが、単純に考えると直前期との比較では業績は悪くないようです(そもそも、この1Qを目論見書に掲載して取引所が上場を承認しているので悪いことはないはずですが・・・)。
にもかかわらず業績の進捗を慎重にに確認すべき状況に陥ったわけですので、主要な取引先との取引がなくなりそうだとか(B to Cのようなのでこれはなさそうです)、主要な製品が生産できなくなったとか、あるいはもっと深刻な何かが起こったというようなことがあったのではないかと邪推してしまいます。
上場前の状態で取消なので、特に大きな影響はないと思いますが、同社のリリースによると、早期に上場を目指すとしていますので、このような取消を申請した会社が再度IPOを申請した際に、投資家からどのような見方をされるのかについては注目してみたいとことです。
グラフィコのような上場取消はたまにあることですが、最近の新規上場銘柄では、10月28日に東証マザーズに上場した(株)バルニバービも事例としては興味深いものです。
何が興味深いのかですが、この(株)バルニバービは7月末が決算日であるという点です。期越え上場の限界である決算日後3カ月以内という期限ぎりぎりの上場となっています。10月28日に上場し、10月29日に株主総会を開催し、10月30日に有価証券報告書を提出しているという結構レアな事例ではないかと思います。どこが監査をしているのだろうというのが仕事柄気になってしまいますが、かがやき監査法人でした。
この会社の成長戦略は、上場時に公表した成長可能性に関する説明資料によると「バットロケーション戦略」とされています。人気のない場所に出店して出店コストを抑えつつ集客を図るということのようです。バットロケーションで継続的に集客し続けるというのは、個人的にはかなりハードルが高く感じますが、結果は時間が過ぎればわかることなので3年後にどうなっているのかを見てみたいと思います。
同社は昨日「JR西日本不動産開発株式会社との大津駅店舗出店に関する合意書締結のお知らせ」というリリースを公表していますが、「バットロケーション」といわれると、近隣住民は微妙に感じてしまうかもしれません。
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