短時間労働者に対する社会保険適用範囲の拡大-2016年10月1日より
2016年10月1日より短時間労働者の社会保険適用範囲が拡大されます。当面短時間労働者が500人以下の企業においては適用拡大が猶予されることとなっていますので、実際にこの影響を受ける企業は限られますが、500人以下の企業にもそのうち拡大していくことが見込まれますので、内容を簡単に確認しておくことにします。
1.現状の短時間就労者の社会保険適用の考え方
現行実務では、行政上の取扱基準に基づき、原則として1日または1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が、通常の就労者と比べて3/4以上の者を被保険者と取り扱うこととされています。
通常の就労者は、同じ事業所において同じ業務に従事する正社員を意味します。
103万円の壁とか130万円の壁というような基準を意識して就労した場合、パートタイムで働いている労働者は、時間又は(および)日数が3/4基準を下回るのが通常ですので、従来パートタイム労働者が社会保険の被保険者となることはほとんどなかったと考えられます。
2.社会保険の適用範囲が拡大される理由は?
社会保険の適用範囲を拡大する理由として、厚生労働省年金局の「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」(平成26年9月18日)では以下の点が述べられています。
格好の良い理由が述べられていますが、高齢化が進んで医療費負担の増加が見込まれるし、世代間扶養の考え方を取っている年金財政も余裕はないので、保険料収入を増やしたいので適用範囲を拡大したいというところではないかと思います。
3.改正後の適用範囲は?
社会保険の適用範囲が拡大されるものの、従来の3/4基準には変更はありません。ただし、3/4基準は従来、行政上の取扱基準でしたが、これが厚生年金保険法および健康保険法に明文化されることとなっています。
では、何が変わるのかですが、3/4基準に該当しない短時間労働者のうち、以下のすべての要件を満たす場合、「短時間被保険者」として社会保険の被保険者となるようになります。
- 週の所定労働時間20時間以上
- 月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
- 1年以上雇用される見込みであること
- 学生でないこと
- 被保険者500人超であること
上記の条件について、次ページで3点ほど確認しておきます。