資本金の減資手続
今回は減資の手続きについて確認します。
1.減資の種類
あまり意識することはないかもしれませんが、減資には以下の二つの種類が存在します。
①有償減資
会社の財産が減少する実質的な減資(減少した資本金の払い戻しを行うイメージです。)
②無償減資
会社の財産が減少しない形式的な減資
一般的に減資は、会社の欠損金を填補し再建を図るために利用されることが多く、したがって上記の区分でいえば、「無償減資」であることがほとんどです。そのため、減資というと「無償減資」をイメージする方が多いのではないかと思いますが、実際には上記の二種類の減資が存在します。
2.減資の方法
具体的な手続きの前に、総論的に減資の方法について確認しておきます。減資は、資本金等という一定の計算上の計数を減少することであり、本来は計算上のものにすぎません。
このように書くと、では実際に株主に財産の払い戻しが行われる「有償減資」はどうなるの?という疑問が生じます。この点について、会社法上「有償減資」は①資本金等の額の減少と②それに伴って増加するその他資本剰余金を源泉とする剰余金の配当という別個の取引の組み合わせで実現するものと位置付けられています。
また、減資手続きは資本金等を減少させるための手続きであるため、減資手続によって株式数が減少することはありません。仮に、減資に加えて株式数も減少させたい場合は、株式併合あるいは自己株式の取得・償却という別個の手続きを組み合わせて実施する必要があります。
3.減資の手続
(1)株主総会決議
減資は、株主への影響が大きいため、原則として株主総会の特別決議が必要となります(会社法447条1項、309条2項)。
この株主総会決議では以下の事項を決定する必要があります(会社法447条1項)
- 減少する資本金等の額
- 減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額
- 資本金の額の減少が効力を生ずる日
原則は上記のとおりですが、株主の利益が損なわれることがない場合には一定の例外が認められています。例外が認められているのは以下の二つのケースです。
①欠損填補の場合→定時株主総会の普通決議で可能
②増減資を同時に行う場合→取締役(会)の決議で可能
減資は欠損填補で用いられることが多いので上記の①についてのみ内容を確認します。
会社法309条2項9号では、定時株主総会におけるける決議であり、資本金の減少額を全額欠損填補に充てるときは、株主総会の普通決議で足りるとされています。これは、会社財産の流出を生じるわけではないので、株主が不利益を被らないためです。ただし、欠損の額を正確に把握する必要があるため、この例外が使用できるのは定時株主総会に限られるという点は注意が必要です。
逆にいえば、欠損填補による減資を期中で実施したい場合は、株主総会の特別決議を要件に行うことができるということになります。