閉じる
閉じる
閉じる
  1. 18監査事務所が会計士資格を誤表記で有報訂正が必要らしい
  2. 内部統制新基準が2025年3月期より適用に(公開草案)
  3. デューデリジェンス(DD)費用の税務上の取り扱い
  4. テレワークの交通費、所得税の非課税限度額適用の有無は本来の勤務地で判断…
  5. プライム市場上場会社、88.1%が英文招集通知を提供
  6. タクシー、インボイス対応か否かは表示灯での表示を検討?
  7. 副業の事業所得該当判断の金額基準はパブコメ多数で見直し
  8. 総会資料の電子提供制度、発送物の主流はアクセス通知+議案等となりそう
  9. 押印後データ交付の場合、作成データのみの保存は不可(伝帳法)
  10. 四半期開示の議論再開(第1回DWG)
閉じる

出る杭はもっと出ろ!

定額残業代(その2)

前回は定額残業代という制度の可否および、それを採用した場合の留意点について書きましたが、今回は定額残業代に含める時間数に制限があるのかについて考えたいと思います。

私が最近みた事例からの感想としては「45時間」としているケースが目につきました。もちろん、30時間、20時間というケースもあり、逆に50時間というケースもありました。

まず45時間という時間数ですが、これは「時間外労働の限度に関する基準(平成10年労働省告示第154号)」において、期間を1カ月として36協定で延長時間を定める場合の限度時間が45時間とされていることからきている時間だと考えられます。

特別条項付き協定という制度はあるものの、上記の基準からすれば、月45時間以上の時間外労働を前提とする制度は理論的にはおかしく労基署の注目を集める可能性があるので、最大限の45時間としているものと考えられます。もっとも、定額として支給する部分を80時間としても、80時間の時間外労働を強制することを意図するものではなく、労使が合意しているのであれば契約自由の原則により、制度自体が否定されるものではないと考えられます。

ところで、定額残業代という制度のメリットはどこにあるのかですが、ある程度の時間外労働が見込まれる場合に一定時間の残業代を固定給的に組み込んでおくことで、労働者にとっては時間外労働削減のインセンティブを与えて効率的な業務を促す効果があり、企業側にとっても人件費をある程度固定化できるという効果があるというような説明がされることが多いと思います。

労働者は時間外労働をしなくても一定時間分の残業代がもらえるので、想定されている時間数以下に時間外労働を抑えようにするはずだということです。ただし、あと少しで残業代がもらえるという場合に、逆のインセンティブが働く可能性は否定できません。

表面上は上記のような説明がされますが、会社の設立当初から賃金制度が残業代込の制度になっていたといようなケースは少なく、残業代の未払問題への予防・対応として制度を変更したケースが多いと思います。

だとすれば、導入企業側としては残業代を払わないですませたい(あるいは労基法どおりに払っていては会社がやっていけない)という本音があるはずです。もともと残業代を払っていなかった場合(労基法違反です。)に、未払残業代問題への予防策として定額残業代という制度を導入しておくというケースが想定されます。

このようなケースの場合、給料の金額はそのままで一定時間数分の残業代を含むように規程を変更した場合、不利益変更の問題が生じ、個々の労働者の同意が必要となります。

企業側からは、従来から労使が合意して残業代を払わないで運用されていたのだから問題ないという主張が聞かれますが、本当に労働者が合意していたのかが問題となります。

賃金債権の放棄については、それが労働者の自由意思に基づくものであることが明確であれば、賃金全額払いの原則に違反するものではないとされています(シンガー・ソーイング・メシーン事件)。

したがって、労働者が残業代を放棄することに合意していることが明らかであれば問題ないということになりますが、残業代が支給されていないケースの大部分は労働者が我慢していたにすぎない状況にあり、労働者が自由意思に基づいて残業代を放棄していたなんてことはないと考える方が普通です。

また、仮に労働者が残業代を放棄することに合意していたとしても、包括的な放棄では認められないと考えられます。すなわち、債権額が不明である状態で放棄するというのは通常では考えにくいためです。そのため、残業代を労働者が自由意思に基づいて放棄したことを明確にするためには毎月あるいは一定期間ごとに、各労働者に対して本来であればもらえるはずの金額(残業代)を明示したうえで、その金額の債権を放棄する旨の合意書をもらっておく位のことをしておいたほうがよいと考えられます。

現実的には賃金体系を見直して多少の給料アップを実現したうえで、定額残業代制度を導入するということになると考えられます。もっとも、本来であれば組み込まれる残業代相当分だけ給料の総額がアップしない限り不利益変更とされる可能性が高いですが、最終的には労使の関係が良好であるかどうかにつきるといえますので、会社の状況等を誠意をもって説明し制度の変更を実施することが必要となると考えられます

それぞれ会社の事情というものはあると思いますが、定額部分に織り込む時間数としては月30時間以内に抑えるのが望ましいと考えられます。前述したとおり、45時間という時間は期間を1カ月として36協定で延長時間を定める場合の限度時間の限度とされている時間数ですが、1年間では360時間(よって月平均は30時間)とされています。

残業代を極力払いたくないという気持ちも分からなくはないですが、月45時間(年換算540時間)という制度は、何か問題が生じた場合に長時間労働を前提とした職場とみられてもやむなしという感じがしますし、印象も良くないように思います。

もちろん定額残業の制度導入時に45時間分の時間相当額だけ給料がアップし、実際に45時間の残業が生じるのは年間に2、3カ月というのが実態であれば労働者にとっても悪くはないと思いますが・・・

日々成長。

関連記事

  1. 会社によるメールのチェックはプライバシー権に反するか

  2. どのような退職給付制度が採用されていることが多いのか?

  3. 宴会への参加に関する労働法上の取扱い

  4. 新入社員の意識調査-2014年度

  5. 風疹の予防接種を就業規則で義務化できるか

  6. 流産であっても場合によっては出産育児一時金は受給可能




カテゴリー

最近の記事

ブログ統計情報

  • 12,926,355 アクセス
ページ上部へ戻る