中国子会社の三項基金
中国に子会社がある会社の連結で、たまに三項基金というものが話題にあがることがあります。
三項基金は以下の三つの基金のことです。
①従業員奨励および福利基金
②準備基金
③企業発展基金
これらの基金は利益処分により積立が行われますが、やっかいなのは従業員奨励および福利基金は確定債務として取り扱われることです。すなわち利益処分で負債が計上されるという処理が現地では行われます。?会社法施行前に行われていた役員賞与の利益処分と同じような処理だと考えられます。
他の二つの基金は資本項目として取り扱われるため、連結処理上はその積立を取り消すように調整すればよいですが、負債に計上された分をどうするかです。
負債に計上された分については、性質的には福利厚生費のようなものなので、PLを経由した形にするという処理をすることになると考えられます。
三項基金の各基金の内容は以下のようになっています。
従業員奨励および福利基金は、使用目的が特別貢献賞与、年末賞与等の従業員に対する非経常的な賞与や集団福利施設の運営に限定される公益金です。積立後は、確定債務として企業ではなく従業員に帰属し、同基金を利用して建てられた建物や施設等の資産は企業ではなく、工会または従業員代表大会の資産となります。
従業員に対する債務となりますので、上記以外の用途には使用できません。また、当該基金の取り崩しについては特に董事会での決議を必要としていません。
なお、2006年の会社法改正により外国投資企業の従業員奨励および福利基金の積立又は廃止は企業が自由に決定できるものとされているそうです。
準備基金は、企業の予備的な留保資金で、欠損金の補てんや増資に使用することができるものです。外資企業法では、登録資本金の50%に達するまで税引後利益の10%以上を積み立てる必要があるとされています。一方で合弁企業法では、そのような規定はなく三基金をいくら積み立てるかは企業の自由となっています。
企業発展基金は、企業の技術改良や設備の増設等に使用され、増資に使用することもできます。
なお、準備基金と企業発展基金は資本金への振替が認められますが、中国では一旦資本金にすると減資は個別の認可が必要となるため、資本金への振替は慎重に行う必要があります。
参考文献
中国事業の会計税務(近藤義雄 著)
トーマツ チャイナ ニュース 2010年12月 Vol.97
日々成長。