尖閣諸島問題
前回、副島隆彦氏の「中国バブル経済はアメリカに勝つ」で同氏の見通し等を紹介しましたが、同書の中で述べられていた尖閣諸島の問題についてです。陰謀説といわれてしまう内容ともいえるので前回は取り上げませんでした。
尖閣諸島沖の中国漁船の拿捕劇について、副島氏は「アメリカが企画して日本にやらせたもの。」と断じています。つまり、アメリカが中国のイメージを低下させることをもくろんでやらせたことというのです。
たしかに、流出した44分間の映像以外の部分を公開しないのは、「すべてを日本政府が公開しようとしないのは、それができない理由があるからだ。」というのは一理あります。このような疑念が生じるのは自然なので、日本政府は残りの部分も公開してもらいたいものです。
網を下ろし始めたばかりですぐに巻き上げられたということもありえますが、「漁船は、網を海中に流している時は、動けない。その時に拿捕するならできたのである。網を急いで巻き上げて逃げるのを待ってから、海上保安庁は追いかけ囲い込んだ。」といわれてもやむなしです。やはり、映像全体を公開すべきです。
上記の拿捕劇は、アメリカのリチャード・アーミテージが司令官となって、次の傀儡首相にしようと思っている前原誠司氏をあやつり計画的に行わせたとしています。
さらに、9月1日に伊豆の下田港の沖で、日米の合同海上軍事演習で、海上自衛隊と海上保安庁が米海軍に教えられて練習した技術を、9月7日に尖閣諸島沖で実行したとしています。
特に根拠は示されていませんが、9月24日に前原氏がヒラリー・クリントンと会うためのお土産(要は中国のイメージを落としたという実績という意味だと解されます)として、この事件が初めから仕組まれたとしています。
尖閣諸島の問題で中国で反日デモが起きましたが、これは普通の中国人ではなく「特定の思想傾向をもった人たち」(「日頃、中国政府に対して強い不満を持っている者たちで、法輪功などの影響を受けている人たちだと思われる」)で、逆に日本国内で起きた反中国デモも「特定の志向傾向をもつ人々であるようだ。統一教会と呼ばれる宗教団体の動きが背後にあるとされる。」としています。
日本国内については真偽のほどは明らかでありませんが、中国については、中国で生活している知人(日本人)に聞いても、特に日本人に対して反感を持っているというような感じではないということなので、中国の人たちほとんどが日本に反感を抱いていると考えるのは誤っているように思います。
尖閣諸島については、2004年3月にも中国人の活動家7名が尖閣諸島に上陸し、沖縄県警察本部が出入国管理法違反の疑いで現行犯逮捕していていますが、今回のような大問題にはなっていません。
大前研一氏は、歴史的背景を理解していないで対応した民主党に責任があるとしています。
そもそも尖閣諸島は、日清戦争で勝利した日本が1895年の下関条約により、中国から台湾を譲り受け、台湾を台湾県とし、尖閣諸島は沖縄に編入しました。ただし、外務省の見解では下関条約が締結される1895年4月より前の1895年の1月にどこの領土にも属さないことを確認した上で閣議決定により沖縄県に編入したとされているそうです。日本に編入された台湾としては、異議を申し立てるような立場になくこの結果、日本が尖閣諸島を実効支配するという状況が生まれました。
第二次世界大戦後、国連のアジア極東経済委員会が尖閣諸島付近で埋蔵量1000億バレル(イランの埋蔵量に匹敵)の海底油田を発見したことにより尖閣諸島に対する注目が高まりました。そして1972年に沖縄が日本に返還され、尖閣諸島も日本の領土にくみこまれましたが、この際、台湾は尖閣諸島の領有権を主張しています。
中国からすれば、台湾は中国の領土で、よって尖閣諸島も中国の領土ということになりますが、日中平和友好条約の締結を優先した鄧小平は、領土問題を棚上げして、問題の先送りを行いました。つまり中国としては、尖閣諸島は中国の領土という認識だが、日本の実効支配を認めるという立場です。
一方で、自民党は国内では尖閣諸島は日本固有の領土といいつつも、領土問題が棚上げされていることを理解していたので、尖閣諸島に上陸した中国人活動家を国内法で裁くとは言わずに、単に強制送還していたようです。
一方で、今回の問題では「国内法で粛々と処理する。」というようなスタンスをとったことから中国側も態度を硬化させ、問題がこじれたというのです。確かにこの辺の事情については、学校でも教えられていないので正しい認識が不足している気がします。
色々な意味で歴史教育を見直す必要があるのではないかと思います。
日々成長。