簡便法を採用しているときの過年度退職給付費用の開示
退職給付引当金の算定にあたり、退職給付会計に関する実務指針(中間報告)(会計制度委員会報告第13号)におけるいわゆる簡便法を採用していた場合に、退職金規程の変更等によって過年度退職給付費用が発生した場合、退職給付関係の注記はどのように記載すべきなのでしょうか?
そもそも、退職給付費用は発生原因にかかわらず営業費用に計上するのが原則ですので、上記のような場合であっても営業費用に計上してしまえば、注記も悩むことなく単に今期の費用計上額を「勤務費用」として開示すればすみます。
しかしながら、現時点においては「発生原因の異常性」、「金額の巨額性」、「測定する金額の客観性」の要件を満たす場合には特別損失として計上することも認められます。
一般的には、営業損益に特殊な要因が含まれることを嫌う傾向があるため「過年度退職給付費用」というような名称で特別損失に計上されることが多いように思います。
もっとも、平成23年4月1日以降開始事業年度からは、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)の適用が開始されるため、それ以降は特別損失としての計上は認められないものと考えられます。
財規の改正も行われ、従来、特別利益及び特別損失の項目の一つに掲げられていた「前期損益修正」が削除されています(財規95条の2 平成22年9月30日公布)ので、平成23年4月1日以降開始事業年度には、性質に応じて営業費用か営業外費用への計上が必要になると考えられます。
なお、改正財規の附則第3項によると平成24年3月31日以降に終了する事業年度の前事業年度に係る財務諸表についても、改正後の財規によって作成することが求められていることから3月決算の会社が平成23年3月期で前期損益修正項目を計上した場合には、翌年度において組替表示が必要になるものと考えられます。
本題に戻りますが、簡便法を採用しており、かつ、特別損失に「過年度退職給付費用」を計上した場合の「退職給付費用に関する事項」の注記としては、前期との比較で意味のある情報を提供することを考えると、やはり通常部分と特別部分を区分して開示するのが望ましいと考えられます。
事例を探してみたところ、平成21年3月期のダイビル(株)(不動産業 大1部)の事例がありました。
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