クラウドで提供するソフトウェアの制作費は自社利用ソフトか販売目的ソフトか?
実態が販売目的ソフトに近いのだから、税務上も販売目的ソフトとして取り扱ってくれといっても認めてもらえるかはわかりません。会計方針で自社利用ソフトとして取り扱っていることが明らかであれば、基本通達からすると、認めてもらうのは難しいかもしれません。
だたし、上記③の点からすれば、監査を受けているような会社で、会計上販売目的ソフトと同様に処理することが監査上認められているのであれば、適正な原価計算に基づく結果だという主張は可能だと思われます。何といっても、基本通達は単なる行政解釈であるのに対して、法人税法施行令は法律な訳なので、どちらがより強制力を持っているかは明らかです。
売れるかどうかわからないソフトの制作費を、かなり初期から資産計上しなければならないというのは制作会社にとってかなり酷ですので、やはり販売目的ソフトであるというように考えた方がよいと思います。
社団法人情報サービス産業協会も「自社利用ソフト」としての処理を求めていますが、税務面で成長を阻害する可能性がある処理をすすめている理由がよくわかりません。クラウドで提供するソフトは、サーバーレンタル+1か月の期間限定ライセンスのようなものであり、期間限定ライセンスであってもパッケージで売れば販売目的ソフトですから、販売目的ソフトとして区分すればよいと考えます。
なお、クラウドのみで提供するようなソフトウェアの場合、税務上の耐用年数が何年になるのかが問題となりますが、法人税法でいうところの「複写して販売するための原本」は明らかにパッケージ販売を意図しており、サービスとして提供しているクラウド型のソフトの場合「3年」を採用するのはハードルが高いように思います。
「その他のもの」として税務上は「5年」で償却するというのが無難だと考えられます。販売目的ソフトと考えれば、会計上は3年以内で償却することになりますので、償却超過額が発生しますが、自社利用ソフトと考えても「5年」で償却しなければならないので、資産計上額が膨らまない分だけましだと思います。
日々成長。