国民負担が少ない東電処理とは(その2)‐経産省 古賀茂明氏
「国民負担が少ない東電処理とは(その1)」の続きです。
前回の最後に、3月末に銀行が融資した総額2兆円の貸付(東電の借入)について、この融資がすんなり実現することが、いかに東電に力があるかを表していると解説していました。
①対政治家
豊富な資金力に加えて、協力会社までを含めた集票能力があるので政治家に圧力をかけることができる。
②対経済界
電力供給会社としてではなく、消費者としての影響力が大きい。特に東電は普通のお客さんではなく非常に優良顧客である。なぜなら通常はコスト削減しようとするところ、電気料金がコストに一定率の利益を乗せた額で決定されるのでコストは高いほうがいいともいえ、コスト削減圧力が強くない。だから経団連は東電支持に回る
③マスコミ
大量の広告費を使用している。震災後もお詫びの広告をテロップで流すなど、まだまだ広告を出すというアピールをするので、東電の批判に一定の圧力がかかる。
④学者
さまざまな便宜を図ってもらっているお抱えの学者がいる
このように、東電は政治力もあるし資金力もあるのでつぶれないと銀行は思っている。つぶれないとすれば、東電は金利は安いが安心して多額を融資できる銀行にとって非常にいいお客さんということになる。
そのため、各銀行は東電向け融資のシェアを維持したかったため3月末の融資を行ったと考えられ、したがって3月末の緊急融資を別枠で保護するということは特に必要ないと切り捨てています。
聞いていてもっともだと思いました。
法的整理をしたら電力の安定供給に支障がでるのではないかという議論については、日本ではまだ法的整理というのが正しく認識されていないようだとしています。現にJALが法的整理を行ったことによって空路に混乱が生じたかと言えばそんなことはなく、法的整理を行ったからと言って電力供給がストップするというようなことはないと解説しています。
東電の3月決算の財務諸表に対して監査意見がでたことに対しては、政府のスキームはこの監査意見を出させることを目的としていたのではないかとし、一種の国家的粉飾だと考えているとバッサリ切り捨てています。
政府が債務超過にしないといっているのだからつぶれることはない、だからゴーイングコンサーンの注記がついたとしても意見はでるというのは会計士としてもなんだかなーという気がします。
日本の今後のエネルギー政策については、送電と発電の分離を行うべきと主張していました。この点については、新たに発電会社の新規参入をみとめるというのでは、送電網を握っている発電会社がライバル会社に対して送電量を高くするということが起こりうるので不十分としています。
発電と送電を分離し、現在の法律では規制がありますが、しがらみのない外資の参入を認めることによって 効率化がすすむのではないかと述べていました。
また、最近よく耳にするスマートグリットですが、スマートグリッドがすすむと発送電の分離という議論につながるし、風力等の分散電源が競争相手になるので、本音として電力会社はやりたくないと分析しています。
現在、世界でスマートグリットは規格争いをしている状況にあり、日本は様々な技術をもっていながら上記のような状況にあるので、お得意のガラパゴス化に突入することを危惧されていました。
古賀茂明氏が書いた「日本中枢の崩壊」という本には上記のようなことも述べられているようなので、今読んでいる本を読み終わったら次に読んでみようと思います。
日々成長