生命保険の国債依存度は約4割?
2011年7月8日の日経Web版で「生保の運用資金、国債依存度41.3%に 5年連続で過去最高」という記事が目に入りました。
同記事の冒頭を引用すると、
「生命保険会社が資産運用での日本国債頼みを強めている。3月末の運用資産に占める国債の比率は41.3%となり、5年連続で過去最高を更新した。それとは対照的に1980年代まで5割を超えていた融資比率は13.7%と過去最低水準。2012年から新たな資本規制が導入されることなどが背景にあり、変動リスクの高い株式や外国債券から国債に資金を移す動きが鮮明になっている。
生命保険協会によると、国内で営業する生保47社の運用資産は3月末で313兆円で、そのうち国債が132兆円。07年度は国債比率の高いかんぽ生命保険が統計に加わり数値が一気に14ポイント上昇したが、その後も比率は上がり続けている。」
ということらしい。
ということは、日本国債が暴落するようなことがあると、加入している生命保険も危ないということになります。もっとも、私の場合、定期保険だからあまり影響ないですが・・・
積み立て型の保険に加入している人は、意識していないでしょうが約4割は国債を買っているようなものという意識を持っておいたほうがよさそうです。
上記の記事で登場する生命保険協会のHPから各年度の貸借対照表のデータをダウンロードして推移表で確認すると以下のようになっています。
(生命保険協会HPの各年度貸借対照表より作成)
かんぽ生命の影響を除外しても国債での運用割合が増加しているという傾向はうかがえます。一方で融資比率は13.7%と過去最低水準という点に関しては、平成12年度の貸付金残高(一般貸付+保険約款貸付)が49,997,315百万円であるのに対して平成22年度の一般貸付金残高が43,877,168百万円と約88%の水準となっており、減少していることは確かですが、構成割合の変動ほどのインパクトはないといえます。
構成割合で大きく下落しているのは、かんぽ生命の運用における国債比率が異常なほど高いことによるものと推測されるので、かんぽ生命のHPから平成23年3月末の運用実績をダウンロードしたところ以下のようになっていました(一部)。単位は億円なので注意して下さい。
貸付金残高の割合は15.2%と構成割合としては全体の割合からみて低くはないですが、内訳をみると「機構貸付」が181,239億円と貸付金のほとんどを占めています。機構貸付とは何かについては、欄外の注で「独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構」への貸付と説明されています。
生命保険協会の発表資料には貸付金の内訳に「機構貸付」という項目はありませんが、平成21年3月末と平成22年3月末の一般貸付の残高を比較すると29兆円から43.3兆円と約14兆円残高が増加しており、かんぽ生命の平成22年3月末の機構貸付残高が15.9兆円であることからすると一般貸付に含まれているものと推測されます。
全体的に約4割が国債で運用とさていますが、かんぽ生命ではなんと約67%が国債運用であり、国債に何かあった時の影響はもっとも大きい商品であるといえます。一方で、その他の生命保険では国債依存度は4割よりも低くなります。
生命保険協会で公表されている平成23年3月末の生命保険会社47社の資産合計が約321兆円(日経の記事では313兆円となっていますが、生命保険協会のHPからダウンロードしたBSの資産合計は321兆円となっています)で、かんぽ生命の資産残高が約96兆円なので、かんぽ生命を除いた場合の資産合計は225兆円となります。
一方で全社合計の国債運用残高は約132兆円、同様にかんぽ生命の国債運用残高は約64兆円なのでかんぽ生命を除くと約68兆円となります。
この結果からすると、かんぽ生命を除いた場合の国債依存度は約30%計算されます。
以上から、かんぽ生命の加入者の国債依存度は約67%、それ以外の生保の場合は約30%といえそうです。銀行も集めた預金の運用先として国債をかなり購入しているので、自分の資産の国債依存度を見直してみたほうがいいのかもしれません。
日々成長。