「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」の改正
日本公認会計士協会から2011年8月10日に監査・保証実務委員会報告第82号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」の改正が公表されました。
今年3月に改正された内部統制基準等に対応して改定されたもので、内部統制監査を行う側の話ですが、ポイントとそのうち遡及修正に関する部分だけ確認しておくことにします。
改正のポイントは以下のとおりです。下記(1)から(4)までが日本公認会計士協会の「監査・保証実務委員会報告第82号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」の改正について」の公表について」で「主な改正点」として挙げられている項目ですが、これらに加えて比較情報や遡及修正への対応についても加わった点も主な改正点の一つだと考えられます。
(1)「経営者が実施する内部統制の評価方法等を適切に理解・尊重した上で、内部統制監査を実施する必要があること」の明確化
(2) 「経営者による内部統制の整備・運用状況及び評価の状況を十分理解し、監査上の重要性を勘案しつつ、内部統制監査と財務諸表監査を効果的かつ効率的に実施し、一層の一体的実施を図る必要があること」の明確化
(3) 中小規模企業(事業規模が小規模で、比較的簡素な構造を有している組織等)の内部統制監査上の留意点の追加
(4) 内部統制監査報告書の記載区分が3区分から4区分に変更されたこと等に伴う内部統制監査報告書の記載内容や文例の見直し
(5)比較情報・遡及修正への対応の新設
まず、比較情報については、改正後の82項および83項で規定が新設されています。
要約すれば、比較情報を作成に関する手続きは決算・財務報告プロセスに該当すると考えられ、前期の数値が整合的に比較情報に反映又は転記されているか等の事項を確保するための体制について評価等を実施する必要がある、ということです。
そして、具体的には以下を県とする必要があるとされています。
① 比較情報が、前年度に表示された金額及びその他の開示(訂正報告書が提出されている場合には、訂正後の金額及びその他の開示)と一致しているかどうか、又は、修正再表示された場合、修正再表示された金額及びその他の開示が妥当かどうか。
② 比較情報に適用した会計方針又は表示方法が当年度に適用した会計方針又は表示方法と一致しているかどうか、また、会計方針又は表示方法の変更があった場合には、当該変更が適切に処理され、その表示及び開示が妥当かどうか。
遡及修正については、改正後の84項で述べられています。
要約すれば、遡及修正が行われても前期の内部統制については再検討する必要がないということです。「よくよく調べてみたら、前期の内部統制にも問題がありました」というのが分かってもあまり意味がないですし、手間を増やしても実益もないですから当然という気がします。
何故不要かの理屈について、同「取扱い」では以下のように述べられています。
「内部統制の評価の対象は当期の財務報告であることから、遡及適用に係る処理や財務諸表の組替えに係る処理は、実際に会計方針の変更又は表示方法の変更を行った年度の内部統制として評価の検証の対象となるが、内部統制の評価時点は当期の期末日であることから、前期の内部統制について遡及的に評価の検証を実施する必要はない。」
上記から前期分は触れなくてよいということが明確ですが、同「取扱い」では前期の評価範囲等についても以下のように念押しされています。
「また、会計方針の変更に伴う遡及適用や表示方法の変更に伴う財務諸表の組替えにより比較情報の財務数値が前期に開示した財務数値と事後的に大きく変動する場合であっても、遡及適用後又は財務諸表の組替え後の前期の財務数値に基づいて改めて前期の評価範囲の見直しを行うことや重要性の判断基準を変更することも必要ない。」
まとめると、「前期は前期、当期の監査をきちんとやりましょう」というところでしょうか・・・
最後になりますが、内部統制基準の改正については「改訂内部統制基準の公表」という以前のエントリをご参照ください。
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