すこし違った角度からオリンパスを見てみよう
オリンパスの一件について、第三者委員会の調査により明らかになったとして、色々と報道され始めています。手口などについても興味はありますが、今回は少し違った角度から見てみます。
まず、このような問題が起こった時に、個人的にはまず「監査法人」はどこかが気になり、次に誰が監査報告書にサインしているのかが気になります。というのは、大企業の監査報告書にサインしている会計士は有名な人であったりすることがあるためです。
オリンパス社のHPでは、2000年3月期からの有価証券報告書が載っているので、1999年3月期以降の監査人をまとめると以下のようになっていました。
伝えられるところによると1990年代から粉飾を続けていたということのなので、基本的には「あずさ監査法人」(前身の朝日監査法人を含む)がずっと適正意見を出し続けてきたということになります。
上から順に見ていくと、中島康晴氏は会計ビックバンといわれた時期に関連する本を多く書いていたのを記憶しています。Amazonで検索してみると、最近の本はあまりないようです。
ただ、「時価・減損会計の知識」(日本経済新聞出版社)の帯のコメントはなんとも痛々しい限りです。
少し飛んで、あずさ監査法人の佐々誠一氏はあずさ監査法人の専務理事で品質管理担当だそうです(2010年6月1日現在)。「品質管理担当」ですか・・・
さらに、小宮山賢氏。検索してみたら名前に見覚えがありませんでしたが、2008年に日本公認会計士協会の副会長でした。あまり目立たなくても(私が知らないだけ?)、会計士協会の副会長ですから・・・
潮来克士氏は、平成22年時点では公開本部長でした。
最後に宇野皓三氏は朝日監査法人時代の平成11年5月に同法人の会長に就任し平成13年5月に引退しています。その後、いくつかの会社の監査役等に就任しているようです。
上記のように法人内の大物が監査報告書にサインしているようですが、10年以上にわたって粉飾を看過していたというのでは、信用失墜です。
KPMGもE&Yも現地レベルでは問題を指摘していたようですが、そうだとしても日本の連結財務諸表は適正意見がでていますので、やはりあずさと新日本の責任は重いと考えられます。
トーマツも大王製紙の1件があるので、結局日本の三大監査法人ってどうなってるの?と世界から見られてもやむをえません。幸か不幸か世界的に安全そうな市場がないので、一気に資金が引き上げられるということもないかもしれませんが、海外投資家が株を買ってくれないと株価が上がらない以上今後も株価は低迷しそうです。
ところで、2010年3月期から監査人が新日本有限責任監査法人に変更されていますが、それ以前は「あずさ監査法人」です。ちなみに2010年中に有限責任監査法人に移行し現在の正式名称は「有限責任 あずさ監査法人」となっています。
そもそも「有限責任」がつくのとつかないので何が違うかですが、「有限責任」がついていない場合、監査法人の社員の民事責任については、会社法の合名会社制度をベースとして無限連帯責任を負うことされています。
一方で、有限責任監査法人に移行すると、個々の監査証明業務については、当該業務を担当する業務執行社員(指定有限責任社員)が無限連帯責任を負いますが、指定有限責任社員以外の社員は、監査法人に対する出資金の価額を限度としてその弁済責任を負うことになります。
普通に考えると有限責任監査法人になる前にサインした分については無限連帯責任だと思いますので、あずさの場合は責任が問われればみんな道連れで、新日本の場合は他の社員は自分の出資分だけあきらめれば済むので比較的気が楽なのではないかと思います。
とはいえ、今の時価総額が約1250億円で、損失を騒動直前の株価からの下落だけだとしても株価が1/4程度になっているので、損失額は3750億円となり、ほぼ無理な金額で監査法人がまた消える可能性もあります。
最後に、オリンパス社のIR情報に、監査役が株主から提訴を受けた旨のリリースが載っていますが、損失の繰延べの事実を知っていたとして解任された役員の一人が「監査役」なわけですから当然です。少なくとも、この監査役については完全に黒なので救いようはないでしょう。
ただ、損失処理は既に完了しているとの報道もあり、現時点のBSで考えると追加で「のれん」の減損をおこなわなければならない部分があるもののそれほど影響がないということも考えらます。
日々成長