中小企業金融円滑法の適用期限が再延長されました-「最後の」延長だそうです
平成23年3月末を期限としていた中小企業金融円滑化法の期限が再度延長され平成24年3月末までとなりました。
今回の延長が最後の延長とのことで、金融庁のHPに掲載されている大臣の談話のタイトルも“中小企業金融円滑化法の期限の最終延長等について”となっています。談話の内容からすると、総合的な出口戦略を講じることにより、中小企業者等の事業再生等に向けた支援に円滑に移行していくうえで、現行の円滑化法を今回に限り24年3月末まで再延長することが適切と判断した、ということのようです。
実際の利用状況については金融庁から公表されており、直近では2011年12月13日に同年9月末までの実績(速報)が公表されています。
同資料によると、2011年9月末までに貸付条件の変更等が実行された金額は以下のようになっています。
①債務者が中小企業者のケース 62兆7926億円
②債務者が住宅資金借入者であるケース 2兆5797億円
中小企業金融円滑化法の施行日は平成21年12月4日で、平成22年3月末から3カ月おきに状況が公表されていますが、細かな区分まで情報が集計されているのは3月末と9月末なので、3月末と9月末の金額で推移を作成してみると以下のようになっていました。
なお、9月末の速報値では農協・漁協の金額が不明なので上記の集計では3月末と同じ金額で集計してありますが、実際のところは金額が増加しているはずです。
推移からすると、まだ収束に向かっているという感じではなく、順調(?)に伸びているという感じがします。こんな感じで2012年も推移したとすると、本当に「最終延長」とすることができるのかが気になります。
普通に考えると貸出条件の変更を求められた債権は貸倒れる可能性が高く正常債権とは考えられませんが、中小企業金融円滑化法により貸出条件が変更された債権については、条件変更後の債権も正常債権と取り扱うことができることとされています。
したがって、銀行も不良債権として処理を繰り延べることができます。上記のとおり累計実行額は右肩上がりで増加しており、将来の不良債権化を懸念した金融庁は昨年中ごろから資産査定を強化しているようですが、金融機関サイドで十分な引当が行われているとは考えにくいように思います。
債務者が中小企業者であるケースが大部分を占めるので、金融機関の種類別の推移をみると以下のようになっています。
上記から明らかなように2011年9月末時点で「地域銀行」が29.4兆円と全体の約半分位を占めています。ここでいう地域銀行とは、「地方銀行、第二地方銀行及び埼玉りそな銀行をいう」とされています。なお、「主要行等」とは、「みずほ銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行、三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、 三井住友銀行、 りそな銀行、中央三井信託銀行、住友信託銀行、新生銀行、あおぞら銀行をいう」とされています。
上記はあくまで実行額ということですので、必ずしも残高というわけではありませんが、貸付条件の変更を依頼していることからすると、それほど返済されてはいないのではないかと推測されます。少なくとも実感として景気が回復している、あるいは回復しそうだという感じはしません。だとすると、地銀等が抱えている約30兆円の対象債権が名実ともに不良債権化する日も遠くないのではないかと懸念されます。
各行別の実行額は不明ですが、地銀の一つや二つは倒産に追い込まれる可能性も否定できません。
ところで、この中小企業円滑化法については貸付条件の変更に応じれば、本来要管理先以下の債権として貸倒引当金の設定が必要になるものを正常債権とみなすことができるだけだと理解していましたが、もう一つ大きなポイントについて理解が不足していました。
というのは、「条件対応保証制度」という制度も創設されており、この制度によると2億8000万円を上限として、40%分を信用保証協会等が保証してくれます。つまり金融機関にとっては、貸付条件の変更に応じれば保証期間(延長含め最長3年)内に貸倒れた場合には公的資金で40%が回収可能となります(上限はありますが・・・)。
当かどうかわかりませんが、今回の延長が「最後の」延長となります。だとするならば、これから来年度3月末までに40%の回収を図ろうと金融機関が動き出すことが予想されますので、倒産に追い込まれる中小企業が多く発生する可能性があります。
体力のある金融機関は、引当を積み増すとともに40%相当を目的に処理を早め健全性を保つ一方で、それができない金融機関は蓋をあけてびっくりということが予想されます。
いずれにしても、2012年~2013年は一波乱ありそうですね。
日々成長