時価純資産法の評価益に適用する税率は?-最終年度の事業税の取扱い
株式の評価方法の一つに時価純資産法があります。時価純資産法は、ある意味客観的ですが、清算を前提としているため継続企業を前提とした場合は妥当な評価方法ではないとされています。
これは、上場している会社でPBRが1倍を下回る会社が散見されることからしても、基本的に妥当な考え方であると思います。
PBRが1倍を下回る場合、表面上は解散価値の方が株価よりも高いということを意味します。しかしながら、実際に解散しようとすれば、そこではたらく従業員が路頭に迷うことになりますし、従業員への補償など解散に伴う付随的なコストを考えると、その時点の株価以上のものを得られるとは限りません。
したがって、株価の評価にあたり時価純資産法は採用しにくいのですが、現実的に会社を清算することも考えられる状況であれば時価純資産法を採用することも考えられます。
例えば、従業員を雇っていない節税が主目的の不動産保有会社を評価する場合には、DCF法による評価が最も適した評価方法であるかは疑問です。
ところで、時価純資産法を採用し、評価益が生じている場合には評価益に対する税額を加味するのが妥当と考えられますが、この時の税額の見積りとしては評価益に実効税率を乗じて計算してよいのかが気になります。
というのは、実効税率は事業税が支出時に損金算入されることによる税額の削減効果を織り込んだ率ですがが、会社を清算した場合に最後の期の事業税がどのように取り扱われるのかによっては、実効税率ではなく表面税率を採用する必要があるためです。
会社を清算する場合の、最後事業年度の事業税の取り扱いを調べたところ、「法人の残余財産確定の日の属する事業年度(最後事業年度)に係る地方税法の規定による事業税の額は、その法人のその事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとされた(法法62条の5第5項)。地方法人特別税についても、同様である(地方法人特別税等に関する暫定措置法22条)」ということがわかりました(『「解散・清算の実務」完全解説』太田達也著)。
つまり、最後の最後は事業税を支出時ではなく発生時に損金算入することができるということなので、通常通りの実効税率で計算してよいということになると考えられます。
結果的には、あまり難しく考える必要はなかったということになりますが、勉強になりました。
日々成長。