法定実効税率の変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の開示例(その2)
平成24年4月1日以降開始事業年度から法人税の税率が変更されていることにより、平成24年3月期の税効果の注記において「法人税等の税率変更により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額修正されたときは、その旨及び修正額」について注記する必要があります(財規8条の12第1項3号、連結財規15条の5第1項3号)。
この点については、以前“法定実効税率の変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の開示例”というエントリで書きましたが、その後12月決算の開示例も増えたので再度取り上げることにします。
開示例を見ていくと、大きく二パターンの開示が見られます。
1.繰延税金資産及び負債の修正額と法人税等調整額に加え、有価証券評価差額金や繰延ヘッジ損益に言及しているケース
①旭硝子(平成23年12月期)
『3 法人税等の税率の変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の金額の修正
2011年12月2日に「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」及び「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」が公布され、2013年1月1日以降に開始する事業年度より法人税率等が変更されることとなりました。
これにより、2013年1月1日以降に開始する事業年度年度において解消が見込まれる一時差異等については、繰延税金資産及び繰延税金負債を計算する法定実効税率は、40.4%から37.8%に変動致します。また、2016年1月1日以降に開始する事業年度において解消が見込まれる一時差異等については、繰延税金資産及び繰延税金負債を計算する法定実効税率は、35.4%に変動致します。
この変動に伴い、当事業年度に計上された繰延税金資産の純額は2,332百万円減少し、法人税等調整額が3,615百万円、その他有価証券評価差額金が1,282百万円それぞれ増加しております。』
②昭和電工(平成23年12月期)
『3 法人税等の税率の変更による繰延税金資産及び繰延 税金負債の修正額
「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」及び「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平成23年11月30日成立)が平成23年12月2日に公布されたことに伴い、当期の繰延税金資産及び繰延税金負債の計算にあたり法定実効税率は従来の40.7%から、平成25年1月1日に開始する事業年度から平成27年1月1日に開始する事業年度に解消が見込まれる一時差異等については38.01%に、平成28年1月1日に開始する事業年度以降に解消が見込まれる一時差異については35.64%となる。
この税率変更により繰延税金資産の金額(繰延税金負債を控除した金額)が2,175百万円減少し、法人税等調整額が2,080百万円増加している。その他有価証券評価差額金は79百万円、繰延ヘッジ損益は17百万円それぞれ減少している。
また、土地の再評価に伴い計上されている再評価に係る繰延税金負債が5,616百万円減少し、土地再評価差額金が5,616百万円増加している。』
2.繰延税金資産及び負債の修正額と法人税等調整額についてのみ記載しているケース
①ゴルフダイジェストオンライン(平成23年12月期)
『3.法人税等の税率の変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の金額の修正
「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号)及び「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平成23年法律第117号)が平成23年12月2日に公布され、平成24年4月1日以降に開始する連結会計年度から法人税率の引下げ及び復興特別法人税の課税が行われることとなりました。これに伴い、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に使用する法定実効税率は従来の40.7%から、平成25年1月1日に開始する連結会計年度から平成27年1月1日に開始する連結会計年度に解消が見込まれる一時差異等については38.0%に、平成28年1月1日に開始する連結会計年度以降に解消が見込まれる一時差異等については、35.6%となります。この税率変更により、繰延税金資産の金額(繰延税金負債の金額を控除した金額)は20,746千円減少し、法人税等調整額は20,846千円増加しております。」
なお、ゴルフダイジェストオンラインは、繰延税金資産及び負債の主の原因別内訳によるとその他有価証券評価差額金△61,982が存在していますが、特に触れられてはいません。
②大日光・エンジニアリング(平成23年12月期)
「3.法人税等の税率の変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の金額の修正
平成23年12月2日に「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号)及び「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平成23年法律第117号)が公布され、平成24年4月1日以降開始する連結会計年度より法人税率が変更されることとなりました。これに伴い、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に使用される法定実効税率は、一時差異等に係る解消時期に応じて以下のとおりとなります。
平成24年12月31日まで 40.4%
平成25年1月1日から平成27年12月31日 38.3%
平成28年1月1日以降 35.4%
この税率の変更により、繰延税金資産の純額が3,225千円減少し、当連結会計年度に費用計上された法人税等の金額が3,225千円増加しております。」
この他、特殊なケースとして繰延税金資産に対して全額評価性引当金が計上されている事例として、平成23年12月期のサインエレクトロニクス株式会社(監査法人トーマツ)がありました。
「3 法人税等の税率の変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の金額の修正
平成23年12月2日に「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号)及び「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平成23年法律第117号)が公布され、平成24年4月1日以降に開始する連結会計年度から法人税率が引き下げられ、また、一定期間内、復興特別法人税が課されることになりました。
これに伴い、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に使用する法定実効税率は、従来の40.7%から38.0%、復興特別法人税適用期間終了後は35.6%に変更となります。
なお、この変更による連結財務諸表への影響はありません。」
なお、繰延税金資産及び負債の主の原因別内訳は以下のようになっています。
全般的な感じでは、有価証券評価差額金等についても書いてあるケースの方が多いようです。
宝印刷の最新の記載例は手元にありませんが、平成23年度版では有価証券評価差額金や繰延ヘッジ損益については記載されていませんでした。
プロネクサスの記載例でも平成23年度版は宝印刷と同様でしたが、平成24年度の記載例では有価証券評価差額金等について書くような記載例となっています。
おそらくASBJが発行している有価証券報告書の作成要領も同様の記載になっているのではないかと推測します。
この注記に関する財規は昨年から変更がないはずなので、平成23年度の記載例で有価証券評価差額金等については触れられていなかったことからすると、開示が必須というわけではなさそうですが、開示したほうがベターということだと考えられます。
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