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分割計画書に記載しなければならない事項は(その1)?

会計上、会社分割により承継する事業の対価として、承継会社(取得企業)が新株を発行した場合には、払込資本(資本金または資本剰余金)の増加として会計処理することとされています(企業結合適用指針79項)。

この際、増加すべき払込資本の内訳項目(資本金,資本準備金またはその他資本剰余金)は会社法の規定に基づき決定することとなり、具体的には、分割契約書または分割計画書に定められたものに従うことになるとされています(会社計算規則39条2項、49条2項)。

会計的な処理としては、分割契約書または分割計画書に書いてある内容に従って増加する資本項目を判断すればよいということになりますが、そもそも分割契約書/分割計画書に記載しなければならない事項は何なのかというのが今回のテーマです。

まず、「分割契約書」と「分割計画書」の違いについて確認しておきます。

「分割契約書」・・・・吸収分割の時に作成されるもの
「分割計画書」・・・・新設分割の時に作成されるもの

で、両者の内容はほとんど同じものとなっています。

会社法上、分割契約書または分割計画書に記載しなければならないとされている事項(必要的記載事項)は大きく以下の四つに分類できます。
①会社に関する事項
②権利義務の承継に関する事項
③対価に関する事項
④効力発生日等のその他の事項

1.会社に関する事項

(1)吸収分割の場合

・吸収分割会社、吸収分割承継会社の商号及び住所(会社法758条1号)

(2)新設分割の場合

・新設分割設立会社の商号、目的、本店所在地、発行可能株式総数(会社法763条1号)
・上記の他、新設分割設立株式会社の定款で定める事項?(同条2号)
・取締役その他新しく設立される会社で採用される機関に応じで必要とされる役員等の氏名(同条3号、4号)

2. 権利義務の承継に関する事項

会社分割契約書・計画書には、会社分割による承継の対象となる資産、債務、雇用契約その他の権利義務を記載する必要があります(会社法758条2号、763条5号)。

ここで気になるのは、承継の対象となる資産および債務を会社分割契約書・計画書にどのように記載しなければならないのか、つまり承継する資産と債務を財産目録的に記載しなければならないのかですが、この点については、書くと長くなりますので次回以降に譲ることとします。

結論からすれば、実務上は『「XXX事業」に関する甲の資産、債務、雇用契約その他の権利義務(その詳細は別紙明細に記載する)を、本件効力発生日において乙に引継ぎ、乙はこれを承継する』というような簡略化された記載も可能です。
また、「別紙」においても、勘定科目の特定は行われていますが、金額の記載はなされていないケースもあるようです。

3.会社分割の対価

会社分割契約書・計画書には、承継会社・設立会社が交付すべき会社分割の対象となる分割会社の「事業に関する権利義務の全部または一部に代わる」対価の数もしくは金額またはその算定方法を記載することとされています(会社法758条4号、763条6号・8号)。

これに加えて、株式が対価として交付される場合には、承継会社・設立会社の資本金と資本準備金に関する事項も記載する必要があります(会社法758条4号イ、763条6号)。

なお、吸収分割の場合の対価は?「事業に関する権利義務の全部または一部に代わる金銭等」とされており、
①株式
②社債
③新株予約権
④新株予約権付社債
⑤①~④以外の財産(金銭や債権等の権利を含む)
が対価として認められています。

一方で新設分割の場合は、対価が上記の①~④のいずれかに限定されており、金銭などを対価とすることは認められていません。

4.効力発生日等のその他の事項
吸収分割の場合には、会社分割の効力発生日を吸収分割契約書に記載する必要があります(会社法758条7号)。

なお、新設分割の場合には、設立会社成立の日(新設分割による会社の設立登記の登記申請が行われた日)に設立会社が権利・義務を承継するものとされています(会社法764条1項)。

効力発生日の他、人的分割を行う場合には追加で必要な記載事項がありますが、人的分割はあまりないように思いますので割愛します。


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