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退職給付債務の計算方法を簡便法から原則法へ変更した場合の処理(その1)

従業員が比較的少ない小規模企業等の場合、退職給付債務を簡便法により計算することが認められています(退職給付実務指針34項)。


従来簡便法で処理していた会社が、今期から原則法で退職給付債務を計算することになった場合に、どのように会計処理するのかが今回のテーマです。特に、いわゆる過年度遡及会計基準(「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」)が平成24年3月期から適用されていることとの関係で、会計処理等にどのような影響があるのかが気になります。

まず実務指針の41項では、「簡便法から原則法への変更は認められる・・・」とされているだけで、具体的にどのように会計処理すべきかについては述べられていません。

大手の監査法人のHPでも実務指針41項に従った解説がなされているだけで、PBOの変動分等をどのように処理するのかについては明示されていません。

とりあえず、遡及修正を無視して理論的に考えると、簡便法から原則法により変動したPBOの額というのは退職給付会計基準でいうところの、数理計算上の差異にも過去勤務債務にも該当しないと考えられます。

退職給付に係る会計基準によると、「数理計算上の差異とは、年金資産の期待運用収益と実際の運用成果との差異、退職給付債務の数理計算に用いた見積数値と実績との差異及び見積数値の変更等により発生した差異をいう。」とされています。
簡便法の場合は退職給付債務を数理計算により求めるのではなく、期末要支給額等で計上しているので、この定義には該当しません。

また、同様に「過去勤務債務とは、退職給付水準の改訂等に起因して発生した退職給付債務の増加又は減少部分をいう。」とされており、簡便法から原則法への変更は退職給付債務の計算方法の変更にすぎないので、過去勤務債務には該当しません。

だとすれば、簡便法から原則法に計算方法を変更したことにより生じた差額は、遅延認識する根拠はなく発生時に一括損益処理が必要となると考えられます。

この点について言及している参考文献を探したところ、なかなか見つかりませんでしたが、ようやく1冊発見しました。
トーマツの会計士である井上雅彦氏が書いている「キーワードでかわる退職給付会計 二訂増補版」で、以下のように記載されていました。

「移行に伴う、「原則法による退職給付債務」と「簡便法による退職給付債務」との差額は、数理計算上の差異としての性格を有しておらず、一時の損益として処理します。」

というわけで、簡便法から原則法へ変更したことにより変動したPBOの差額は損益処理するということで問題なさそうです。

では、過年度遡及会計基準が適用になって、どうなるのかですですが、これは次回とします。

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