今さらですが金商法193条の3って何だろう・・・
オリンパスの騒動の時に、金商法第193条の3の発動を検討したというような話が出ていたと記憶していますが、「金商法第193条の3」はどんな制度なのでしょうか。
会計・監査ジャーナル2012年7月号に「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について」(監査・保証事務津委員会研究報告第25号)が掲載されており、その中で金商法193条の3についても触れられていました。
今まで、幸いにも金商法第193条の3を調べる必要に迫られたことはありませんが、条文上は以下のように定められています。
金商法193条の3第1項
公認会計士又は監査法人が、前条第一項の監査証明を行うに当たって、特定発行者における法令に違反する事実その他の財務計算に関する書類の適正性の確保に影響を及ぼすおそれがある事実(次項第一号において「法令違反等事実」という。)を発見したときは、当該事実の内容及び当該事実に係る法令違反の是正その他の適切な措置をとるべき旨を、遅滞なく、内閣府令で定めるところにより、当該特定発行者に書面で通知しなければならない。
少なくとも法令違反等事実を発見した場合に、当該特定発行者に書面で通知するのは義務となっています。
全体の流れについては、同研究報告の「7.金商法第193条の3に基づく監査人の対応」の「(1)金商法第193条の3(法令違反等事実発見への対応)」によると、以下のようになると要約されています。
①監査人による特定発行者(金融商品取引所に上場されている有価証券の発行会社等)の法令違反等事実の発見
②監査人として法令違反の是正その他適切な措置を取るべきことの通知(金商法第193条の3第1項)
③法定期限内の是正その他適切な措置について特定発行者が未対応
④監査人として、財務計算に関する書類の適正性の確保に重大な影響を及ぼすと判断
⑤監査役(監査役会・監査委員会)及び取締役会に当局(金融庁長官)に申し出る旨の書面による通知(金商法第193条の3第2項)
⑥当局(金融庁長官)に対する書面による申し出(金商法第193条の3第2項)
⑦当局(金融庁長官)に申し出た旨を特定発行者に書面で通知(金商法第193条の3第3項)
上記の②を誰に通知するのかですが、この点については監査証明府令第7条において「当該特定発行者の監査役又は監事その他これらに準ずる者」とされており、取締役会は含まれていません。
まずは、監査役との連携ということなのでしょうが、研究報告では「事象の重要性から、実務上、取締役会等にも通知することが想定される」とされていますので、現実的には取締役会にも書面で通知することになるようです。
どんな感じの通知がなされるのかについては文例が以下のように示されています。以下は監査役会宛ですが、取締役会の文例も示されています。
上記の文例中「金融商品取引法第193条の3第2項の規定に従い、平成○○年○月○日に、当該事実に関する意見を当局(内閣総理大臣(金融庁長官))に申し出る予定です」という部分がありますが、この予定日については、金商法施行令第36条で以下のように定められています。
・ 当該通知した日より2週間経過した日以降に有価証券報告書の提出期限が訪れる場合は、当該通知した日より2週間経過した日と有価証券報告書の提出期限の6週間前の日のいずれか遅い日
・ 当該通知した日より2週間経過した日以前に有価証券報告書の提出期限が訪れる場合は、有価証券報告書の提出期限の前日
・ 四半期報告書又は半期報告書の場合は、それぞれの提出期限の前日
今後も深くかかわることがない条文であってもらいたいところですが、一応こんなものがあると頭の片隅においておこうと思います。
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