2012年3月期の決算短信における自由記載方式採用は6社
2か月位前に“決算短信の業績予想開示に自由記載形式が認められました“というエントリを書きましたが、2012年6月13日に東証から「平成24年3月期決算短信の開示状況について」が公表され、自由記載形式を採用した会社数等が明らかになりました。
以下の表のとおり自由記載方式を採用した会社は6社で全体の0.4%にすぎません。通常は、あえて従来の表形式から自由記載方式に切り替える理由もないので、この結果は当然といえそうです(ただ、もう少し自由記載方式を採用している会社があってもよさそうではありますが・・・)。
(出典:東証 「平成24年3月期決算短信の開示状況について」)
自由記載方式を採用した会社名は明らかにされていませんが、経営財務3070号(2012年6月25日)によると、「テラプローブ、新生銀行、三菱UFJフィナンシャル・グループ、日本証券金融、長野銀行、ソフトバンクの6社がこれに該当するものと思われる。」とされていました。6社中4社は金融業という結果になっています。
そこで、上記6社の決算短信の記載内容を確認してみました。
(1)テラプローブ
(2)新生銀行
(3)三菱UFJフィナンシャル・グループ
「連結業績予想」ではなく「連結業績目標」である点も面白い点です。2011年3月期の決算短信では「平成24年3月期の連結業績予想」となっており、今期から敢えて「目標」に文言を変えているようです。あくまで、目標であり下回ることがあるというニュアンスを含んでいるということでしょうか・・・
(4)日本証券金融
(5)長野銀行
(6)ソフトバンク
ソフトバンクの記載はかなり強烈です。
一部を抜粋すると、「売上高と営業利益は当期を上回り、営業利益は7,000億円を確実に上回ると見込んでいます。」と記載されています。
業績予想で「確実に」という表現を使用することが適切なのかは疑問です。確実に営業利益7,000億円を上回るために、営業外費用等が増加しなければよいですが・・・
こんな記載をされたら、営業費用を営業外以下に計上する潜在的リスクが高いので監査も大変ではないでしょうか。
ちなみに、2011年3月期の決算短信での業績予想の記載は以下のようになっていました。
「当社グループは、移動体通信事業におけるネットワークの増強と顧客の獲得に主眼を置いて取り組んでいきます。設備投資(検収ベース)については、当社連結ベースで約5,000億円まで積み増すことは決定しましたが、顧客獲得のための施策については状況に応じて臨機応変に立案・実行していく必要があり、現時点では収益に影響を与える未確定な要素が多いため、増収増益を見込んでいるものの、業績予想を数値で示すことが困難な状況です。
当社としては、株主および投資家の皆さまに対する情報開示を一層推し進めるため、連結業績については、合理的に予想可能となった時点で公表することとします。」(ソフトバンク 2011年3月期決算短信より)
1年でここまでかわるとは、ソフトバンク絶好調ということなのでしょう。
連結業績予想等の開示状況の表の自由記載形式以外の部分ですこし意外だったのは、レンジの開示が思いのほか少なかったことですが、レンジで開示したのに予想値と実績が乖離したら目も当てられないということで採用しにくいということでしょうか。
また、平成19年3月期との比較で目立つのは通期予想のみを開示している会社が顕著に増加しているという点です。
この点については、「業績管理を年次で行っており第2四半期に係る予想値を算出していないこと等が決算短信において記載されています」とのことですが、今までは何だったのか?となりそうで、なかなか勇気がいる記載です(今年から管理しないことにしたと言えばいいのではありますが・・・)。
最後に、業績予想の開示形式以外の部分では、決算発表までの平均所要日数は38.4日となり、過去最短を更新しました。とはいえ、4月中に決算発表を行った会社の割合は約2割で平成19年3月期とほとんど同水準となっています。
能力的に不可能ということもあるでしょうが、どちらかといえば、無理して4月に決算発表を行うことに意義を感じていないという会社が相当数あるように感じます。
日々成長。