保養所や社宅は「賃貸等不動産」の範囲に含まれるか?
今回は、会社が福利厚生目的で保有している保養所や社宅が「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」(以下「基準」という)でいうこところ「賃貸等不動産」の範囲に含まれるか否かについてです。
結論からすれば、福利厚生目的で保有している保養所や社宅は「賃貸等不動産」の範囲には含まれません。
基準や適用指針では保養所や社宅について触れられてはいませんが、ASBJが公開草案に対するコメントとして公表したものの中に以下のように記載されています。
基準の結論の背景に書いてあったような気がしていたので、どこに書いてあるのかを探すのに少し時間がかかったので、備忘を兼ねて今回取り上げました。これで目的は達成されたのですが、ついでに賃貸等不動産の時価等の開示についてもう少し確認しておきます。
まず、基準における「賃貸等不動産」とは何かですが、第4項で以下のように定義されています。
「棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得を目的として保有されている不動産(ファイナンス・リース取引の貸手における不動産を除く。)をいう。したがって、物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている場合は賃貸等不動産には含まれない。」
そして、賃貸等不動産には以下の者が含まれるとしされています((1)~(3)は第5項、(4)および(5)は第6項)。
(1)貸借対照表において投資不動産(投資の目的で所有する土地、建物その他の不動産)として区分されている不動産
(2)将来の使用が見込まれていない遊休不動産
(3)(1)および(2)以外で賃貸されている不動産
(4)将来において賃貸等不動産として使用される予定で開発中の不動産や継続して賃貸等不動産として使用される予定で再開発中の不動産
(5)賃貸を目的として保有されているにもかかわらず、一時的に借り手が存在していない不動産
「投資その他の資産」の「投資不動産」として計上されているものが対象となるのは明らかですが、有形固定資産に計上されている将来の使用が見込まれていない遊休不動産や賃貸等不動産に該当する無形固定資産に計上されている「借地権」を範囲に含めるのを忘れないように注意する必要はあるのではないかと思います。
注記すべき内容については、以下のとおりです。ただし、賃貸等不動産の総額に重要性が乏しい場合は注記を省略することができます(基準8項)
① 賃貸等不動産の概要
② 賃貸等不動産の貸借対照表計上額及び期中における主な変動
③ 賃貸等不動産の当期末における時価及びその算定方法
④ 賃貸等不動産に関する損益
財規8条の30も上記と同様の内容となっています。なお、連結財務諸表を作成している場合は個別財務諸表での注記は不要です。
では、会社法の計算書類ではどうなっているかですが、計算書類でも注記は必要です。ただし、会社計算規則第110条で求められている事項は以下の二つです。
①賃貸等不動産の状況に関する事項
②賃貸等不動産の時価に関する事項
したがって、賃貸等不動産に関する損益については計算書類では開示する必要はありません。もっとも有報作成会社であれば、敢えて損益に関する事項をはずすことはせず、有報と同様の記載を行うことになると思います。
事例として平成24年3月期の東部ネットワーク株式会社の有報および計算書類の該当部分を掲載しておきます。
(出典:東部ネットワーク株式会社 平成24年3月期有価証券報告書)
(出典:東部ネットワーク株式会社 平成24年3月期 計算書類)
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